小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
2017/04123456789101112131415161718192021222324252627282930312017/06
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夜市 (角川ホラー文庫)夜市 (角川ホラー文庫)
(2008/05/24)
恒川 光太郎

商品詳細を見る


前書き
望んだわけではない。ほんの少しうらやましかったんだ。
少しだけみんなを見返すだけのボールを早く投げる肩とみんなが羨むホームランを打てる器用さが欲しいと思っただけなんだ。
誰だってあるはずだ。目の前に自分が欲しいと思っている物や才能が手に入るとわかれば、すぐさま手に取ってしまうものだろ。
俺だけじゃない。どんなやつだって俺と同じ状況にたてば、同じことをしているはずだ。
弟に少しだけ我慢してもらうだけでいいんだ。
野球が得意といえる自分を味わってみたい。そう、少しの間だけだ。
決して弟が嫌いというわけじゃない。ごめんよ、裏切ったと思わないでくれ。
必ず。必ず、迎えにいくから、それまでは我慢していてくれ。
必ず、次の「夜市」が開かれる日にまた迎えにいくから。
だから、俺を恨まないでくれ。必ず。。

ジャンル・タグ 
ローファンタジー・サスペンス・重量感(小)・現代風・現代に存在する異世界の入り口・才能を買う契約とその代償・死者の通り道

評価  
素敵 

ホラーではないですね。怖くないです。完全にファンタジー。なぜ、ホラーのくくりにされているのか少し謎です。季節は夏から秋頃。

現実世界→異世界の入り口を発見→異世界で過ごす→悪いことがおきる、不吉なことがおきる→解決、現実世界へ→懐古の念をいだく、なつかしく思う→完結へ。

というパターンがつねです。つねかわだけに。 
だからとって、ワンパターンで飽きるということは個人的には全くないです。話の流れはパターンが同じで先を推測するのは容易です。しかし、読みやすいので、「ファンタジーやサスペンスのジャンルさくさく読める小説なんかないの?」という時に、この小説はうってつけ。「異世界迷宮」といえば恒川さんの本を読むべし。そして、読んだ後に なぜか懐古の情を抱いてしまうのも、恒川さんの小説の特徴です。異世界、迷い込む、懐かしさを望むなら「夜市」をどうぞ。
「夜市」・「風の古道」の二本立て短編。


感想ネタバレ↓
「雷の季節の終わりに 」以来の恒川さんの小説。今ところ、恒川さんは2冊目ですが、恒川さんのホラーは劇的なホラー、スリラーというわけではないようですね。チラッとのぞかせる程度の怖さです。ホラーが苦手な人でも抵抗なく読めるのではないでしょうか。それとは反対にホラー好き、怖さを求めて読む読者には物足りないかもしれないです。どことなく懐かしく、哀愁漂う切なさをいつも恒川さんの小説では感じてしまいます。恒川さんの小説を読む場合は、あなたが「懐かしさ、異世界の入り口、切なさ」を物語に求める時に読むとよいでしょう。恒川さんの小説で有名なのは、まずこの「夜市」、次に「雷の季節の終わりに 」、「秋の牢獄」が続きます。「夜市」、他の二つの作品同様、これらの作品が読まれているのは、小説の大賞を受賞していることが効いているようです。「夜市」は日本ホラー小説大賞だそうです。二冊目ですが、恒川さんの作品には作風のブレはないようなので、今後新しい作品が発表されても安定した作品を残してくれそうな気がします。

「雷の季節の終わりに 」の記事の時にも述べましたが、短編のタッチ、怖さと切なさをブレンドさせること、端的でとても読みやすい、という面でとても乙一さんの作風を思い出してしまいます。ぜひ!、乙一さん好きは、恒川さんの小説を読むといいでしょう。逆もしかり。違うところは恒川さんの物語の方が救いどころがあるというか、切なさに希望が持てること。乙一さんはどこまでも切ない。せつないまま、最終ページをめくってしまう場合が多いですね。

「夜市」☆☆☆☆
夜市をよんだら、「笑うセールスマン」、「千と千尋の神隠し」を想像させました。笑うセールスマンの陰険さと、千と千尋の神隠しの、異世界に足を踏み入れてしまう所が似ていると思いました。この後の、風の古路もそうですが、現実世界から、異世界の入り口を見つけてしまい、足を踏み入れて物語の幕が上がるという物語の展開がパターン化されているようですね。私はそれに対して、デジャブは感じるのみでマンネリは起こさないです。物語自体は平凡だが愛すべきものです。

「風の古道」☆☆☆☆
この本のタイトルに「夜市」とついているわけですが、どちらかというと、こちらの方がメインな気がします。夜市と同様に、「千と千尋の神隠し」とイメージさせるプロローグ。

<本文より>
主人公が今よりも幼い頃、奇妙な体験をしました。家から離れた公園で親とはぐれてしまい、途方にくれていたとき、公園にいたおばさんに、家に帰る抜け道を教えてもらいました。なぜ、そのおばさんが家の行き方を知っているかどうかも疑問に抱かずに、抜け道を通ったのです。すると、そこは、現実とはかけ離れた、田舎道が現れたのです。しかし、田舎道といっても、普通ではない。おばけがでるという。しかも、道端にある家々は道側から背をむけ奇妙な佇まいであり、人が全くいないのです。道路もアスファルトでなく、ただの舗装されていない道。とにかく、嫌な気持ちにさせるのです。主人公はおばさんの通り、抜け道を抜けていくのです。


基本、風景描写は少なく、地名等の固有名詞も少ないので、異世界のイメージが若干沸きにくいですが、その分、あっさりと読める点があります。ともかく、この異世界には特に行きたいとは思わないですね。おばけが徘徊しているだけですから。ラストはちょっぴり切ない。それがまた、本の傾向が似ている乙一さんの作品を思い起こさせます。

<夜市/解説/東雅夫>

素敵な言葉どもが記事の跡
昨日と今日で人は変わる。

季節が巡り、町を歩いていると、いつかの助けた少女と兄だった。二人は足を止め、男から少し距離を置いたところで深くおじぎをした。通行人も多いところで、男は気恥ずかしくなったが、嬉しくもあった。このような感謝を人から受けたのは生まれてはじめてだった。そして、それ以上の感謝を示してもらおうとは思わなかった。男は二人が顔を上げる前に路地裏に飛び込んだ。一人で歩いていると、ふと笑いがこみ上げた。その日は一日中笑っていた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
にほんブログ村 本ブログへ

関連記事

この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
http://kkk12liliyom.blog69.fc2.com/tb.php/101-b90ec6ae
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。