小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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ラギッド・ガール 廃園の天使 2 (ハヤカワ文庫 JA ト 5-3) (ハヤカワ文庫JA)ラギッド・ガール 廃園の天使 2 (ハヤカワ文庫 JA ト 5-3) (ハヤカワ文庫JA)
(2010/02/10)
飛 浩隆

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前書き
そこは真っ白だった。
天井も、壁も、床も何もかもが白で構成されている。
他の色といえば、中央には真紅の長方形のテーブルがあるだけだ。それ以外の色はない。

シンプルな空間。シンプルな背景。シンプルな研究室。

だからこそ、今、テーブルに横たえている彼女は整った美しさも際立つというものだ。
彼女自身もそのことをよく知っている。
彼女は自分の美貌も、自分の才能も、自分の性格も、自分の過去も、重々熟知している。
だからこそ、全く気づかない。彼女は気づかないのだ。
惑わされていることに。
なぜ、自分がこの真紅のテーブルの上に裸体を晒し横たえているのかを。

この世とは得体のしれないところだ。
私たちが日々生活している場所は、経験として馴染み深い場所なだけであって本質的に信頼できる場所とは限らないのだから。

そして美しく見えていることさえ、信頼の足りることか定かではない。
<Rugged Girl>ラギッド・ガール なんて彼女に相応しい言葉なのだろう。


ジャンル・タグ 
SF・仮想現実の正体と歴史・重量感(大)・仮想現実がもたらす社会現象と倫理観・<数値海岸>の様々な仮想リゾート・仮想現実の戦乱・「役割」に芽生える感情・饒舌な恥辱さ・意味不明な形容詞


評価  
素敵 

『廃園の天使』シリーズ第2作。意味不明で、残忍のため野蛮で、エロを象徴的であるため官能であり、科学が科学らしいために、どこまでSFな本書。一回読んだだけでは完全に理解できないのですが、それでいて、もう一度、読みたくなってしまう一冊。特に、「ラギッドガール」の章はとても難解。正直、私は「ラギッドガール」に読むことに疲れました。ただ、言い含めたいのは、読み切ったら、必ず、続きが気になってしょうがなくなるのです。本書は、一作目の続きであり、一作目の解説であり、過去であります。1作目がよめたら、これも最後まで読むべきです。飛さんはどの作品をよんでも思うことなんですが、感性が豊かだなと感じます。いろいろな作品をよみくだいてきたのではないでしょうか。いくらSFといえ、あれだけ混沌としている物語もなかなか見つけるのが難しいような気がします。読みづらいのも同様です。※残忍な表現、性的な表現がたくさん含まれているので、苦手な人は注意です。


感想ネタバレ
今回2作目が出版されて、タイトルと装丁(表紙)を見て思ったのは、意外さでした。定石でいくなら、1作目がグランヴァカンスという夏のリゾートの「区界」をタイトル名に持ってきているので、2作目を「区界」名をタイトル名につけると思いました。秋のスラム街(モノクローム・シティ)の「区界」とか、春の空中庭園(蒼天の孤独者)の「区界」(私のセンスには苦情は受け付けていませんw)的なタイトルがくるのかと思ってました。タイトルは「ラギットガール」。また装丁を見ても、1作目の中世的なイメージから2作目の無機質なイメージになっていたので、意外さと「なぜ?」という思いがしました。1作目を読んだ直ぐ後は2作目読みたくてしょうがなかったですが、すぐ買ってからは、パラ読みして数か月中断しました。

中断したのは飛さんの小説が読みづらいからです。読みづらいので後回しにしました。例えるなら、「海外作家の小説を和訳した訳本」を読んでいる錯覚を覚えます。訳本って、和訳された時の違和感のある日本語ってありますよね。それの違和感が飛さんの本にもいえるのです。本書で言えば、2章の「ラギッド・ガール」に入ってから顕著で少しばかり四苦八苦しました。「情報的似姿」、「直感像的全身感覚」など等。

ただ、噛めば噛むほど、味が出るのが飛さんのストーリーで、3章のクローゼットに入ってからの1作目のグラン・ヴァカンス、2章のラギッド・ガールとの関連性が見えてきて面白かったです。「なんだ先にそのストーリーをもってきてくれよ」と思ってしまいました。

SFのジャンルでは造語は否めないとしても読みにくいですね。しかしながら、飛さんの物語を生み出す想像力が他の作家にはない方向性を持っています。飛さんの独創力には感嘆させられます。


飛さんが今回に2作目につけたタイトルは「ラギッド・ガール」= Rugged Girl

Rugged:でこぼこの、洗練されてない,荒削りな; 無骨な など等...

この小説は「ラギット・ガール」という言葉をどの小説においても、ひとつのテーマに置いていることが読み終わると分かりました。
1章は、Rugged〈生活・訓練など〉苦しい,つらい:状況にあるAI少女が出てきます。
という言葉を
2章は、〈容姿が〉でこぼこの,起伏の多い;醜い:女が出てきます。
3章は、〈体、肉体を〉傷つけられてギザギザな:女性のミステリーを追います。
4章は、〈性能など〉洗練されてない,荒削りな:AIの少女に見せられた少年(情報的似姿)のエピソードを見ます。
5章は、〈秩序など〉を大荒れ模様に変えてしまう:女性を作り出した最高のAIの苦悩を描いています。

私が単に読み終わって上記のように感じただけですが、意味不明のようで、一貫性があるのです。飛さんのストーリーの設定の深さが私にとってたまらなく大好物です。

1章:夏の硝視体(グラス・アイ) Air des Bijous ☆☆☆

1章に関しては、前作「グラン・ヴァカンス―廃園の天使Ⅰ」のヒロインポジションのジュリー・プランタンのひとつのエピソード。コットンテイルの発見した時のエピソードでした。一回読んだだけではすべて内容を理解するのは無理なので再読してみて気づいたのですが、この「夏の硝視体(グラス・アイ) Air des Bijous」のストーリーは、4章の「魔述師」のストーリーの前後に持ってきた方がよかったのではないかと思います。夏の区画の話は1作目にさんざん話しているので、最初の章に持ってくるより、オチや結末、ネタバレした後に話を挟んで来る方が哀愁の感情と、ストーリーに浸る充実感が得られる気がします。2章と3章は関連ストーリーであり、1章のストーリーとは分離してます。1、4、5章は区界の話で、しかも何らかの形で繋がりをもっているので、伏線の張り方としては失敗な気がします。


2章:ラギットガール Unweaving the Humanbeing ☆☆☆

「直感像的全身感覚」を多少は理解できました。視覚、聴覚、嗅覚、触覚などの感覚から、得た感覚をすべて記憶できること。そしてその覚えた記憶は忘れないし、その経験を受けたその時の感覚まで再現できるのです。私は「直感像的全身感覚」をそうとらえました。前作とは、大分、作風を変えてきた印象を受けました。シリーズものなのに。。。だが、それは先を読んでいるうちに勘違いというか、早とちりだということがわかりました。作風が違うと感じるのは、本書が世界が二つ存在するからです。現実とバーチャル世界(そう呼んで正しいかはわからない)で、1作目「グラン・ヴァカンス―廃園の天使Ⅰ」はバーチャル世界です。今作は章によって、どちらかに世界が変わります。

2章は現実世界の章です。主人公アンナがバーチャル世界<数値海岸>の起案者たちのとの交流を描いた物語です。
多重現実という仕組みをつくり商業化させたドラホーシュ教授と教授が導いた天才児・醜さと「すべての記憶を忘れない」という類稀な才能をもった女性・阿形渓と、その研究チームによって完成された<情報的似姿>という技術を過去を語るように進められていきます。アンナもその研究チームに参加していて、彼らのこの交流からバーチャル世界に自分とほぼ同じ人格を転送?発現させる<情報的似姿>の仕組み、考案過程が語られます。一回読んだ時は内容が理解できなかったですが、ストーリーとして完成されていることを再読してわかりました。さすがというべきか、オチが必ずすごいです。なにか、物語の展開を反転させないと気がすまないだという飛さんのストーリーを改めて実感しました。

※(ネタバレ注意)ただ、まだわからないことがあって、アンナの情報的似姿の結末は2章で語られます。ところで現実世界の生身のアンナがなぜ最終的にあのような結末を向かえたのかよくわかりませんでした。それが3章で語られるわけですが。アンナの情報的似姿の結末は理解できます。生身のアンナは情報的似姿のアンナと同義語なんでしょうか。それとも元々のアンナ自身が物語にあった結末、そういう願望を抱いていたからでしょうか。それとも、アンナという存在が阿形渓の作成したオリジナル人格ということでしょうか。だれかこの件に関してコメントもらえたら助かります。

3章:クローゼット Close it. ☆☆☆☆☆

3章は現実世界の章です。3・2章の物語の後々の話です。<数値海岸>コスタ・デル・ヌメロがサービスをを本格的に開始してから5年が経った現実世界です。そして、前章のラギットガール、先立つ記念碑的コンサート―ヴラスタ・ドラホーシュ教授と阿形渓がリスボンのジェロニモス修道院で開いたイベントからだと七年後の話です。主人公、数値海岸の工事ツール<蜘蛛>の特注の制作や、AIキャラクター資源管理システムを担当しているガウリ・ミタリは、恋人カイル・マクローリンの死に、衝撃をうけ、疑問を起こし、真相を突き止めようとしていきます。カイルとは、阿形渓とともに、数値海岸を一から創造した集団の一員であったのです。カイルの死の周りには2章の主人公カリン・安奈・カスキの影がチラついていたのです。

2章と3章は時系列からして続き物です。2章がミステリ要素があるのに対して、3章はサスペンス要素が満載です。
2章で一種のミステリのネタバレが終わった後で、結末を知った上での違う一人称からの主人公視点。なかなか面白い。。この章にきてから、面白さがじわじわきました。とくに、文章で、『カイル・マクロ―リンは自分の上に「死」を五百回も上書きされていたのだ』という表現が個人的には新鮮だったです。これがSFとサスペンスを合わせた表現方法なのかと。パソコンを構造を感覚的にわかっていればとても「なるほど」な表現。やっぱり飛さんの作り上げてくるところが好きですねー。ちょっと読みにくいのが難点ですけど。

4章:魔述師 Laterna Magika ☆☆☆☆☆


サブタイトル
1.<ズナームカ>の秋
2.インタビュー(一)
3.夏の砂
4.インタビュー(二)
5.浮き桟橋
6.インタビュー(三)
7.初期化と再配置
8.インタビュー(四)
9.進水式
10.インタビュー(後記)
11.<大途絶>


うーん、これが一番面白かったです。とくに、とてもいいと思えるのは、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のような、章が変わるごと、ファンタジー世界を描いている章と現実世界を描いている章を交互にかえていく手法がなんとも小気味良かったです。この場合、奇数の章が数値海岸の出来事、すなわち仮想世界の中の出来事。一方、偶数の章が<情報的似姿>や<数値海岸>という技術、かつアトラクションが世論に浸透している現実世界の章。

2章と3章と連動しています。時系列的には、3章と近い時期か3章のその後の話でしょう。前作、グランヴァカンスから見て同時期か、過去だと思われます。奇数の章では、なぜ、グランヴァカンスの大途絶が起きたかの原因がバーチャル世界側からわかります。そして偶数の章は、数値海岸の大途絶が起きた原因が現実世界側から解説されます。映画のマトリックスを想起して仕方なかったですね。

読み終わった後、なんとなく切なくなる話でした。バーチャル世界で出てくる老人はなんとなく前作に出てきたキャラクターのような気がしました。ただ、この本ではネタバレしなかったですね。本当のところは誰かはわかりませんでしたが。次作が楽しみです。

5章:蜘蛛の王 Lord of the Spinners ☆☆☆☆

これは前作グラン・ヴァカンスより過去の話。前作のキャラクターが登場。万能のAIランゴーニの過去が明らかにされます。待ってました、ランゴーニさん。前作ではとても、愛着のもてるキャラではなかったですが、このエピソードを読むと、少し愛着を感じました。スターフォーズのアナキン・スカイウォーカーのような悲劇の主人公ようでしたね。ランゴーニがどうしてダークサイドの局面に落ちてしまったのかのエピソード1といったところでしょうか。なかなか読みごたえがあり、殺戮的でもあり、性的な混沌に満ちたストーリーでした。飛さんの本来の得意な作風が顕著に出ていた気がします。



ヒトメモ
硝視体(グラス・アイ)・・・他のどんな事物にもできないやり方で、区界の物体や現象に働きかける。視体の変容の力を、ふれるものの心象を使って細かくコントロールすれうば、意思の外側の世界を変化させられる。コントロール、修練可。視体はを光(そして要素)を取り込み、抽象化する。意味あるエッセンスを抽出。個性をもつ。光やさまざまな感官の感情、官能のサンプリングマシンでありシンセサイザ。人は視体を覗いて視点、世界の感じ方を借りることができる。
視体(アイ)・・・硝視体の略語
暫定的螺旋、クリップボード、絵筆が斜め…物質化する視体、能力不明
手風琴…ラズベリーより小さなみどりのガラス玉。音楽が大好きで、みるものすべて、聴くものすべてを音楽に変え、まわりの空気を振動させる。
蛋白石(オパール)の糸…人の残念を糸で実体化させる。
青い匂い袋(ブルー・セント・バック)…光と温度、触れているAIの感情や思念などの周りの条件に左右して匂いを発する。



素敵な言葉どもが記事の跡
テーマパークであれば、すべてのアトラクションが一貫したコンセプトのもとに作られることだろう。しかし、区界はひとつひとつがもっと独立性の高い「作品」なのである。数値海岸は映画配信サーバに近い。そこには古今東西、無数の映画タイトルが収められてる。名監督が大予算を投じて撮りあげる超大作がある。天才の霊感を腕っこきのスタッフの技が支えてできあがる傑作がある。ぼんくら監督と駄目なスタッフなのに憎めない愛嬌をもつ佳品がある。健全なもの、危険なもの。先鋭的なもの、保守的なもの。その多様さが数値海岸の魅力だ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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この記事へのコメント
こんにちは。このたびはエディ友ありがとうございました。
それにしてもきちんと系統立てて整理されたすごいブログですね。
これからもよろしくお願いします★
2011/06/19(日) 12:00 | URL | 親G #-[ 編集]
Re: タイトルなし
親Gさん こんにちは。

返信が遅れてすみません。この度はエディ友申請ありがとうございます。
コメントもありがとうございます。

本を読むのはとても好きなので、ここまで続けてこれました。
まだまだ発展途上なブログですが、褒めて頂きありがとうございます。
あまり周りからの反応の少ないブログ少ないので、とてもうれしいです。
こちらこそよろしくお願いいたします。
2011/06/22(水) 00:32 | URL | リリ #-[ 編集]
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