小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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旅のラゴス (新潮文庫)旅のラゴス (新潮文庫)
(1994/03)
筒井 康隆

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前書き
人生にどれだけの旅を続けていくことができるだろう。

家族を残して旅立つのは心残りだったり、新たに出会った人と別れるのを惜しんだり。そんなことしていたら、旅など続けられてはいなかっただろう。俺が、私が、薄情な奴であることもあるが何よりも旅には目的があって、目的を達するための決心がある。

旅は孤独だ。その前に、私たち自身が孤独である。人生も旅と同じようにみることができる。ただ私たちは自身の人生をいちいち孤独な物だと認識しながら生活しているわけじゃない。旅もそれと同じに考えればいい。
別れを惜しむことができるのは、俺が、私が、今も旅をしているからであり、旅をしていなかったらこんな感情を抱くことさえできなかったはずだ。私には旅が生に合っているということなのだろう。

いまは私はとても幸福だ。こうして旅から始まり、旅に骨を埋めようとしている。
こんな幸福なことはない。


ジャンル・タグ 
古典的なファンタジー・中世風・重量感(小)・男尊女卑な一面・文明退化から来る超能力・ラゴスの伝記・「必要なことは地位じゃない、知恵」・「逆転満塁ホームラン」なストーリー

評価
前半の章(集団転移・解放された男・顔・壁抜け芸人・たまご道・銀鉱)
普通


後半の章(着地点・王国への道・赤い蝶・顎・奴隷商人・氷の女王)

最高  

私がよく参考にさせてもらっているブログがあるんですが、nanaco☆さんが管理人の++ 薫風日記 ++ で紹介されていたので興味がそそられて読んでみました。この小説自体は200ページほどですぐに読み終えられると思います。申し訳ないですが、上記の評価が二つにしてあるのはストーリーが前半と後半で面白さの度合いが違ったのでやもえず、評価を二つにしました。決して2編構成の物語ではありません。なんというか、著者さんの前半で書く男女のあり方、価値観、男女の色恋の見方が保守的というか、偏った見方に感じました。その客観性に欠いた部分が好きではなく、前半は正直面白くなかったです。ただ、後半は個人的には、スラップから脱した投手のように文章に味が出てきて内容も納得いくものでした。個人的見解ですが、後半の社会科学の概念を年頭に置いたストーリーが著者さんが書きたかった得意分野の内容なのでしょう。そこに、切なさを加えたので、いいスパイスになりました。

感想ネタバレ↓

主人公ラゴスがこの惑星に不時着した先祖のとある遺産をみつけるため、あるいはその見つけた遺産を研究するため、旅に出ます。ラゴスの青年期から始まり壮年期、中年期、高年期を描くラゴスの伝記、武勇伝が書かれています。初めの章は、青年期であり、一人称「おれ」で始まり、「王国への道」の章の途中の文章から一人称が急に「私」に変化します。それは、著者さんの時間経過を意識させるためだと思われます。言葉づかいも前半と後半で変化してきます。最初の青年期、は、軽いノリの言葉づかいで、壮年期になると、丁寧な言い回し、穏やかな言葉づかいに変わっていきます。中年期、高年期頃になると、おじいさん言葉になります。章は集団転移・解放された男・顔・壁抜け芸人・たまご道・銀鉱・地点・王国への道・赤い蝶・顎・奴隷商人・氷の女王とあり、1章ごと一つの話が完結して、次の章ではまた違う話に移行していきます。よって短編、連作短編ではないですが、章でバラバラに読んでも読み解けるでしょう。ただ、後半に近づくほど、すべての章が地続きだと分かってきます。前半はロードムービー的で会話文が多く、動きが多いですが、後半につれて、地の文が多くなり、主人公が歴史や社会科学のあり方について考えたり、思考する場面が多くなります。

前半の話は内容が薄く後づけ的なショートストーリーのようであまり面白みがなく、後半の話のつなぎ的扱いだとしか思えませんでした。この小説では、むしろ、章の「王国への道」からストーリーのエピローグとして物語をはじめても別に違和感なく読んでいけます。ただ、それだと旅をテーマにしているのに、旅が少なく物語が短くなってしまいます。また、「王国への道」から物語の初めとすると前半出てくるキャラクターの事前情報が得られないことが難点ですが。

前半が嫌いなのは、大体、ラゴスが旅の途中で出会う村人や旅人、特に女性が主人公に好意を頂き、必ずといっていいほど、主人公のことを好きになり、体を重ねたいと思ったり、子供を産みたいと思うことです。そして、主人公が他の登場人物のどの人よりも達観して常識人の扱いをうけていることや、村人たちにとって赤の他人であるのに信頼における人間だと判断されていることがリアリティがなく嫌いでした。

壁抜け芸人の章で、なぜか貧乏で学校もいっていない教養が足りていないキャラクター(ウンバロ)が「にんげんのからだは原子で出来ている。原子と原子と間は大きな隙間がある。この隙間と隙間の間を利用して壁を通り抜ける」というセリフがあるんですが。まず、SFの要素もなく、ファンタジーであるのに、また、世界観は科学技術が発達した世界(科学技術が退化した世界)ではなく、中世風の世界観であるのに「原子」という言葉を持ち出してくることが違和感があります。次になぜこの青年が、このキャラ設定で「原子」のことを知っているのかが疑問です。「原子」の説明も中途半端。

<本文より>ウンバロにできるのならおれにも、いや、たいていの人間にも、できるのではないだろうか。教育がなく、育ちが悪い故に精神力が強いとは必ずしも言えぬはずであり…中略…その上、想像力というものは教育によってかえって豊かになるはずではないか。いやいや。教養が身につくと下品な想像力はかえって低下するのかな。しかしおれなどはただ都会の学校を出ているというだけで、教養によってさほど下品さを失ったわけではなく、そもそも育ちがいいといえるほどの家柄でもない。

この文章も大嫌いですね。まず、教養がなくて、育ちが悪い人物だからといって、必ずしも教養があって、育ちが良い人物の方が優れてるとは言えないですし。教養があって、育ち、家柄がいい人物でも、下品な人はいますよね。逆も同じ。

何か新しい発想をする力っていうのは、知識の延長上にあるんではないですかね。大体、想像力の話に教養の話がもちだされるのもどうかなって思うんですが。そもそも教養が身につくと想像力が低下するともが限らないですよね。想像するために、その想像する対象となるものを知識として知っていなきゃならないですよね。関係ない知識と関係ない知識が結びついて新しい想像につながるですよね。問題なのは、つながってる知識と知識を別の視点から見れない、つまり先入観が想像力の妨げるのはわかります。ただ基本的に何事も模倣したり、基本的な知識がないと想像することもできないです。

後半はとてもいい作品でした。ラゴスの旅の経験や先祖が書いた本で知恵を得て国が発展していく過程や国を発展させたい思いと、それとは裏腹にラゴスが成功すればするほど、ラゴスが尊敬する兄の立場が悪くなってしまう葛藤などを事細かに書き連ね、これが筒井さんの得意分野なんだと感じました。

山賊から逃げるためにスカシウマに乗り、崖を飛びあがるシーンもよかったです。

カカラニと一緒。カカラニと一緒。
強く飛びたいと念じた。ああ。その高みよりみおろす地上の景観はどれほど素晴らしいことであろう。いや、それ以上に、この親しき友と一緒に汚穢の地飛び立ち澄んだ青空に浮遊することはどれほど喜ばしいことか。
さぁ。友よ。共にとぼう。
馬は崖を飛び出すなり前肢をやや交差させるように揃えて宙へ突き出した。わたしたちはそのままの速度で高みへとんだ。はるかに行く手の高みにわれらを待ち受ける、雲。


恋い焦がれる女性を想い、老人になっても旅を続けようと決心し、いないと分かっていても、氷の世界へ、だれもいない地へ旅立つラゴス。クライマックスは本当に感動しました。しかも、結末を書かない終わり方には、かっこいいと思い鳥肌が立ちました。とてもステキな終わり方だったって思いました。どうなったんだろう、哀愁、切なさだけが残り、とてもいい気持ちで読み終えることが出来ました。

また会いましょう、ラゴスさん。


<解説/村上陽一郎>



素敵な言葉どもが記事の跡
人間はただその一生のうち、自分に適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。

「わたしの決心はもう、何年も前からなんだよ。わたしがここへ来てあんたと会えたのも、わたしが氷の女王にあこがれたからではないのかね。それにわたしはそもそもがひとっ処にとどまっていられる人間ではなかった。だから旅を続けた。それ故にこそいろんな経験を重ねた。旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。たとえ、死であってもだ。人生と同じようにね」


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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