小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)
(2000/09/05)
京極 夏彦

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前書き
ざわざわ、ざわざわ、騒騒、騒騒
波の音。潮騒の記憶。

私は生まれも育ちも山の中の村でございます。
私の郷里は信州でございます。もちろん海などございません。
生家は農家で、とても貧しゅうございました。
十三のときに近在の造り酒屋に奉公に出向きました。
当然、海などみたこともないのでございます。
生来、海とは無縁なのでございます。

なのに、なのに
また、海鳴りだ。
海鳴りが鬱陶しい。
海鳴りが嫌いだ。
そもそも海など見たこともないのだから、嫌いというのはおかしいものである。
ああ、この忌ま忌ましい海鳴りで目が醒める。
寝ても起きてもひっきりなしに聞こえ続けるあの音はどうにかならぬものだろうか。
私は海で一人で遊んでいる。浜に波が打ち寄せる風景がありありと。
ざわわ、ざ、ざざ。騒騒。
また海の夢なのである。夢かうつつなのか。
“私の記憶”の中に“私ではない記憶”があるのはなにごとか。
夜が来る度、私は深海に身を投じるような不安に苛まれる。

どこまでも、いつまでも沈み続ける。
そのうち水は体にまとわりつき、ふやけてきた肉片は剥がれ、骨が見える。
私はすっかり骨だけとなる。
恐怖で大声を出しても、骨はカタカタ音を鳴らすだけである。
はたから見たら、海に沈む私の骨はなんとも不気味である。


ジャンル・タグ 
ホラーチックな推理ミステリ・昭和初期・重量感(大)・首無し死体・海に浮かぶ黄金の髑髏・キリスト教と精神心理学と仏教と神道・精神分析学者フロイトの顔・狂信者たちの瘴気・劇的な回心

評価  
素敵 

百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)の第3弾。ホラーチックではありますが正直怖くないです。シリーズが進むごとに怖さはなくなっている気はします。とはいえ、私がこのシリーズを読み続けているのはこの怖さを求めるわけではなく、もったいつける謎の正体にワクワクさせられるからです。そう、ミステリとして最高なのです。言い換えれば、ホラーが苦手な人でも全然抵抗なく読めます。相変わらず、長ったらしく読みにくいですが面白かったです。ただ、寄り道の多い本なので、読む方は飽きずに読み切ってほしいですね。今回は宗教、心理学の内容の濃い内容でした。前作(秋)の続きで、設定では時期は冬頃のようです。いつもどおり、お馴染みのキャラクターが出てきます。新しいキャラも出てきます。

感想ネタバレ↓
話は、前作「魍魎の箱」から2ヵ月後の話。今回は生まれる前の記憶があるという女にまつわる事件。主役は関口や木場や榎木津ではなく、新しいキャラクターが出てきます。主役格は伊佐間という釣り堀を経営している親爺と教会の使用人または居候の身の降旗です。伊佐間は緊張感のない穏やかなおじさんで、前半の話で主人公として物語の一編に遭遇していきます。神社、寺院巡りが趣味の貧乏旅をする伊佐間は旅路にとある女と出会います。偶然の経緯で女の過去の話を聞くことなるんですが、女は人殺しをしたと言い始めるのです。一方、降旗は精神心理学を学び精神科医として活躍していました。が、一つの行き詰まりに嵌まってしまい、悩みに悩み、白丘という牧師の管理している教会に行き着いた経緯があります。伊佐間と時を同じくして降旗は教会に悩みを打ち明ける女の話に元精神科医の血が騒ぎたてられるのです。なんといっても女は首を斬っても切ってもよみがえる夫の話を戸惑いなく、平静にしゃべって語るのです。

今作は「魍魎の箱」を「魍魎の箱 1巻」だとしたら、「狂骨の夢」は「魍魎の箱 2巻」といった印象があります。話の内容と展開が似ているので。「魍魎の箱」は、全部関連した事件一つ一つが同じ大きな犯人が関与していると思いきや、全部の事件がバラバラな関係のない事件。一方、「狂骨の夢」は全部別の事件同士だと思われたものが、全部同じ遺恨を元にした個々の事件だったのです。京極さんは、「魍魎の箱」の発想をひっくり返して、もう一度使ってきたようです。魍魎の箱は前半がとても面白かったですが、狂骨の夢は後半からじわじわ面白さが噴き出してくる感じでした。しかも、妖怪の話が宗教の話につながっている所など、同じ要素が多いなと思いました。妖怪の具体的な話は少ない内容でしたが。とはいえ妖怪というのは、人間の感情や思考と切ってはきれないものなんだと京極さんの本を読めば読むほど思います。

今回の話には

1)自己分析と夢の予見性や啓示性について~フロイトの影~
2)キリスト教の歴史
3)髑髏や性を利用した宗教や左道密教の実体

などができてきました。


降旗はその考え方に与しない。
降旗は夢に摩訶不思議な神秘まで見出すことができない。

百鬼夜行シリーズ第1作目「姑獲鳥の夏」と同様、京極さんの夢にまつわる議論が繰り広げられます。毎度のこと、合理的かつ、科学的な目線で。一作目と違うのは、フロイトが出てくるってことでしょうか。精神心理学からの目線からで見た一個人の人間の「夢」、「記憶」から予見され、その後実際に起きた事件、事故は、果たしてどういう因果があるかなど、諸々解釈が飛び交います。







素敵な言葉どもが記事の跡
作品には興味があったが作者に興味はなかった。好きな作品を書くからと云って馬が合うとは限らぬし、いい作品を書くとも限らない。作品が好きだから作品に会ってみたいと考える人の気持ちは関口には解らぬ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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