小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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哄う合戦屋 (双葉文庫)哄う合戦屋 (双葉文庫)
(2011/04/13)
北沢 秋

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前書き
そもそもいくさだてとは、いかに味方の犠牲を少なくして、楽に敵に勝つかを追求して決めるものでなければならぬ。

各々が武勇とおのれの強さのみにまかせて戦えばいいものであらぬ。明日のいくさだてには今日考えるでは遅いのだ。何日も前から戦略を立てて、もっとも不利ではない条件でいくさだての当日に備えるのである。いままでのような各人の勝手気ままないくさでは、到底勝つことなど覚束ぬぞ。そのことを皆、肝に命じることだ。


ジャンル・タグ 
英雄戦記ものの歴史小説・近世風・重量感(中)・孤影の軍師・田舎の豪族が一国の大名・武骨な性格と豊かな感受性

評価 
素敵 

このところ、歴史小説といえば、葉室麟さんや飯嶋和一さんの人情ものの小説が多く、ばりばりの戦記物の歴史物語に飢えていました。人情ものも好きですがやっぱり、私はとっては時代小説はなんといっても戦記物が胸あつなのです。時代小説を最初に見出したのも浅田次郎さんの「壬生義士伝」が最初です。一人の武勇な(知勇な)天才が一つの一時代を動かすような物語がものすごく好きですね。なので、探して見つけました。「哄(わら)う合戦屋」。いかにも戦記物。

端的に言うとこの話は天才軍師が田舎豪族を一国の大名に伸し上げていく成長物語です。

今の私の気分にぴったりのストーリーだと思いました。読み終わった結果、なるほど、「北沢さんは策士だな」と思いました。展開が一段落する前に次の展開、次の展開と。王道な起承転結。物語の展開の起伏が随所に盛り込まれていてなかなかよかったです。ワクワクと熱中してあっという間に読める小説でした。心理描写が軽く登場人物の性格が短絡的な面があり、リアリティが薄いのが少し残念でしたが。そして、タッチが軽快なので、時代小説が疎い人にもとても入っていきやすい歴史小説です。コア向けというより万人向け。まだ、戦記物を読みたい私は今度の時代小説は和田竜さんでいきたいと思います。


感想ネタバレ↓
人はその時々で自分の都合のいい言葉を使いますよね。今まで言っていた考えや主張も無視できるような、もっともらしい言葉を。今私がもっともらしい言葉を使うとすれば、「Simple is best」。

小説をある程度、一巡した時、原点に戻ってくるというのは誰にとってもありますよね。私も同様で新しい著者さんを読んだら必ず、馴染みのある著者さんに次の小説に戻ってきます。その繰り返し。テーマについても同じです。今では「ジャンルを問わず」を心がけていますが、元々、私の読みたいテーマは「冒険もの、英雄もの、異世界、拮抗した世界観」です。

私の原点回帰としての歴史小説。「哄う合戦屋」タイトルの名はあまり好きではないですが、著者さんが出版されている書籍が少ないにも関わらず、本のサイトで人気だったので読んでみました。

話は、信濃国々で、武勇で誉れ高い石堂一徹が、放浪先、たまたま横山郷(小県群青木村付近)の領主、遠藤吉弘の娘・若菜に声をかけられるところから始まります。時代は天文十八年(1549年)で、織田信長が台頭するよりも前で、武田信玄や上杉謙信などが活躍していく頃の戦国時代。主人公の一徹はもともと村上義清で知られる村上家に仕えていましたが、村上と一徹の間には天下の取り方に考えが食い違いがあり、離別しました。武勇で知られる石堂一徹は、当然武術に抜きん出ていますが、信濃全土に有名なのは実は、戦がうまく巧妙なのです。それはただ、武力で一流ということではなく、一つ一つの戦に戦略、戦術を立てて功績をかけていくからです。

とても面白かったです。まず、弱い地位の者あるいは不利な状況の者が、強い存在に圧倒していく様がとても面白かったです。歴史小説はいつも読みますが、この著者さんの小説は歴史小説にしてはすごく読みやすいですね。これはいままで取っ付きにくかった歴史小説に苦手な人にもらくらく読める小説です。ストーリー自体苦手だとどうにもならないですが。

ただ、この小説で不満なことは心理描写がいまいちな所とキャラクターの性格が一辺倒な所ですね。主人公がいつも正確で適切な考え方をもっていて、それに追随し主人公に好意的なものは正しい判断をし、敵意を抱いているものは、考える頭を持たず、誰でも気づきそうな失態を犯すのです。そのような勧善懲悪が前面に出ていて、その部分でリアリティがなく残念でした。この小説の場合は、主人公、若菜、一徹の家臣たちは常に正しい考え方をしているのですが、遠藤吉弘や敵意をもった遠藤家家臣、敵方などは、なぜわざわざそんな考え方に固執するのか、疑問な部分は多々ありました。主人公が万能なこと自体は良いですが、対主人公のキャラクターがみな考え方が劣っているが納得いかないですね。心理描写はその勧善懲悪な部分があからさまに出ていました。あとですね、若菜はヒロイン方ですが、出番がさりげない方が若菜は好感が持てたなぁとか思いました。

良かったところは展開がぽんぽん速いのでしかも、展開に緩急をつけるのがとてもうまいなとおもいました。だからこそ、最後のオチだと思いました。オチに納得いかない方もいるかもしれませんが、私はよかったなと思います。一作しか読んでないですが、北沢さんは展開に緩急をつけるところ、起承転結どんでん返しに魅力を感じます。ドラマチック(劇的)な演出に長けていそうですね。次作にはそこを期待したいです。

ここに出てる大半は、フィクションですね。土台や背景は史実を元にしますが、登場人物や物語であった戦はフィクションです。主人公もフィクションです。


素敵な言葉どもが記事の跡

一徹は、不意に体を揺らして哄笑した。
「俺は長い間、大軍を率いて広野に決戦する日を夢に見ていた。だがたったいま、僅か二人にても会心のいくさはできるものと思い知ったぞ」




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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