小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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MISSING (双葉文庫)MISSING (双葉文庫)
(2001/11)
本多 孝好

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前書き
両親はどちらもいなかった。事故で二人ともいない。
私は、東京にいた伯母の家に預けられ、そこで育てられた。私は、愛情を持って接してくれる伯母夫婦に感謝しながらも、しぐさや言葉づかい、視線にどこか疎外感を感じずにはいられなかった。愛情に飢えた子どもが取る手段といえば、拗ねるか、その逆に愛想よくふるまうかだ。私は後者をえらんだ。

礼儀正しく、人当りがよく、明朗で、誰にも親切に接し、それでも決して本心を見せない。それは、年を重ね、人並みに恋をするようになってもかわらなかった。大学を卒業し、私は教師になった。特に情熱を持ったわけではない。だだ、学校という閉じられた世界は何にも替えがたい魅力的な職場だった。同僚や生徒のプライバシーには無関心だった。私は、家と学校を行き来するだけの生活を送った。

伯母が亡くなってから一人暮らしになった。両親の事故のきっかけを作った当事者から事故以来私の口座には事件以来お金が振り込まれ続けられた。

生活はひどく楽だった。
しかし、決して楽しくはなかった。
私が佐倉京子と会ったのはそんな時だ。



ジャンル・タグ 
ミステリ恋愛要素をちょっびっと盛り込んだ切ないヒューマン短編集&人間の内側を描いたサスペンス・現代風・重量感(小)・負の連鎖からの小さい光・憎しみと悲しみが作り出す佯狂・青春の思い出と別れ・デスノートのキラ的発想

評価  
良書

「眠りの森」★★★★★


5話の短編集です。この小説のジャンルはミステリという枠に置かれていますが、決してミステリではありません。青春ヒューマン小説です。最初の「眠りの海」と「祈灯」は良い作品だと思いました。特に、「眠りの森」単独だけなら、最高★5です。短いのになんて内容の濃い話なんだと思いました。無駄な文章がなく、要領よく文章がつらなっていて読み心地も最高です。また、結末もよかったです。他の3つは個人的にはいまいちでした。残念なのは、5つとも、テーマや結末が似通って、どういう展開になるかなど、オチがパターン化されている節があるところです。5つも短編合わせるなら、味の違う作品を5つ並べてほしかったです。

むしろ良作の「眠りの森」単独で書籍にしたほうがうれしかったです。



感想ネタバレ
人生、仕事、恋愛、日常の生活などを厭世的なヒューマン小説として描いている短編集です。決してミステリではありません。「このミステリーはすごい」というタイトルで10位にランクインされている「MISSING」ですが、作品の良し悪しの前に、選考の対象になるのがおかしいですね。ミステリではないのですから。

短編は眠りの森、祈灯、蝉の証、瑠璃、彼の棲む場所の5つです。端的に言えば、この小説はほぼ自殺を描いた小説です。(多少、自殺とは関係ない作品もありますが。)

文章は感情や心理描写などを最小限でとてもさっぱりして読みやすいです。特に5つの作品全体は悲しくて切ない内容の重めの作品ですが、心理描写が少なめでさっぱりなので嫌味になりすぎ、憂鬱気味なりすぎないのではないでしょうか。それはどこか、乙一さんの文章を思い起こさせます。(決してホラーではないです)もの悲しげなストーリー感とさっぱりした文章のタッチがどこか似ている気がしました。

「眠りの森」 ☆☆☆☆☆
教師の主人公はある理由にきっかけに海へ自殺未遂をします。そこを一人の少年に助けられます。それは厭世的な主人公が唯一心から受け入れ、愛した生徒、あるいは彼女でした。主人公はある事件をきっかけに彼女を失うのです。それが自殺を図った理由でした。主人公を助けた少年に事情を語っていきます。

この作品を読み終えてから、この小説は当たりだと思いました。この章までは。展開はとてもありきたりでシンプルですが、意外に伏線が絶妙に入っていてとても好きになりました。とてももの悲しげな影のある作品でした。

「祈灯」☆☆☆
主人公の妹の友達のあだ名は「幽霊ちゃん」。幽霊ちゃんこと酒井美郷は、交通事故で彼女の妹典子を失いました。その時の精神的ショックから彼女は自分を「酒井典子」と名乗るようになるのです。主人公は彼女の過去と妹を介して接していくこととなるのです。そこには、他人家族では想像できない悲しい事実と裏切りの行為がうずまっていたのです。

ほぼ、「眠りの森」とテーマと大筋のストーリーが似通っています。良作だと思うのですが、物語のスタイルがマンネリ的で、新鮮さがなかったです。

「蝉の証」 ☆☆☆
一時的にフリーターあるいはニートである主人公が祖母を一緒に暮らそうという説得をするため、祖母の暮らす老人ホームに訪れました。いつも拒否する祖母は、暇な主人公に老人ホームの相川さんという老人の行動に不信な行動を調べてほしいと依頼します。暇で断る理由もなく、主人公は老人の身辺を調べることにしたのです。そうすると、老人には一人の少女にかけた思いを発見することになるのです。それは健気で、ひねくれていて、どこか優しさを感じるものでした。

これもまた良作なのですが、なにせ事件、伏線など、物語の鍵になる事柄、現象、アイテムが前作、前々作と同じで個々の作品としては素晴らしいのですが、新しさがなく二番煎じ感が否めなかったです。組み合わせを変えているだけのようにも思えました。これは唯一、内容が暗いタイトルではなく、さわやかなハッピーエンドをむかえたのは、よかったです。

「瑠璃」 ☆☆
高校生の主人公には、「ルコ」という4つ年上の従姉いました。ルコは自由人で、退屈という理由で高校をやめ、その足でアルバイトをし、旅行に行ったりする子で、アクティブな子でした。それが「ルコ」らしさでした。二人はとても仲がよく、二人で遊びに出かけることがよくあったのです。ただ、それは3年前の話で、音信不通な状態が続いてから突然ルコから主人公に連絡入るのです。ルコから妻子持ちの恋人と一緒になってもいいのかという恋の悩みを打ち明けられるのです。そこにいた彼女は3年前のポジティブなルコではなくは「ルコ」らしさを失った似ても似つかない彼女の姿でした。

ルコという存在を主人公を目線で描いた作品で、前半と後半の彼女の取った行動と心模様の対比に面白さを感じました。内容はとりとめない日常を描いています。ただ、この作品も個人的には嫌でした。特に終わり方です。オチが祈灯と同じですし、起承転結の結を、毎回、同じようなオチを使っています。それが正直残念でした。また、最後に手紙を主人公に渡しにくる男の会話のやり取りも「なぜそこでそんなことを話す必要性があるのか」が疑問ですきになれませんでした。

「彼の棲む場所」 ☆☆
18年ぶりに中学生?の頃の同級生と再会し、昔の思い出話と暴露話が始まります。同級生はメディアにもよく出る有名人気な大学教授に上り詰めていました。彼の表向きの理論立った正義感ある顔と実際彼が世間に向けた心の顔には、憎しみに近い暗澹たる気持ちが表裏一体でうずくまっていたのです。

唯一、この物語だけ、サスペンスです。物語の方向性はこれまたとても厭世的で、どこか世の中を軽蔑し、憎しみに似た感情を描いています。思い出話で出てくる事件は主人公の知っている事実には裏があり、同級生が事実を淡々と語っていきます。だれでも憎しみを持つことや、誰かに死んでほしいと思ったりすることを、心のどこかで思っていることを、この同級生の大学教授のセリフで描いています。そういうこともあるでしょうが、だから何という感じはすごく感じました。


私がこの作品を読んで全体通して言えるのは、この小説は「自殺を描いた作品」です。



素敵な言葉どもが記事の跡

動物園のカバに世界の広さを説いてみたところで、カバは檻から出られるわけではない。説かれたカバにしてみればそんな言葉は無視するか鼻で笑うしかなかろう。それを意気地なしと罵るには檻はあまりにも頑丈すぎる。

看板さえ提げていなければ戦災博物館かなにかに見える建物と、不機嫌そうに切符を切るモギリのおじさんが気に入って、僕はたまに足を運ぶ。賞味期限を確認する気になれないポップコーンを気の抜けたコーラで流し込みながら、とうてい感情移入できそうにない映画を見ていると何となく幸せな気分になるのだから、僕もかなり安上がりな人間だ。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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この記事へのコメント
こんにちは。同じ本の感想記事を
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お気軽にどうぞ。
2011/10/07(金) 18:16 | URL | 藍色 #-[ 編集]
Re: タイトルなし
藍色さん、こんにちわ。
いつもトラックバックどうもです。
トラックバックさせていただきました。
また別の機会もよろしくお願いします。

> こんにちは。同じ本の感想記事を
> トラックバックさせていただきました。
> この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
> お気軽にどうぞ。
2011/10/26(水) 21:49 | URL | リリ #-[ 編集]
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2011/10/07(金) 17:44:09 | 粋な提案
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