小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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忍びの国 (新潮文庫)忍びの国 (新潮文庫)
(2011/02/26)
和田 竜

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前書き
わしらには、卑怯、姑息などということは存在などせぬ。

他人を思いやることがどんなに愚かなことか。

目的のためなら他人を出し抜き、人を殺すことなど屁とも思わぬことだな。

他人の命を奪うことなど、大したことではなく、自分の命も然り。感傷を抱かぬ。

なぜだか、わかるか。
術をかける相手の心を読み解き、その心に漬け込むことで勝ちを得る。忍びの術の心得はそこにあるからじゃよ。
人の情に心動かされてしまっては、忍びの術が衰えるばかりだ。

わしらが戦をするのは、銭があるかないかに尽きる。そう、主が銭を出してくれるか、それは大事だ。



ジャンル・タグ 
戦記物の小説・重量感(中)・天正伊賀の乱・殺戮の天才・伊賀忍者の考え方と習性・百地三太夫という土豪・石川五右衛門という忍者・織田家の織田信雄

評価  
素敵 

時代小説ですが、文章が硬くなく、現代小説のようにスラスラ活字が入ってくる小説でした。かつ、随所に歴史文献を引用し、解説を入れながら、ストーリーを進めていくので、歴史背景に疎くてもすんなり受け入れられる親切設計な書き口です。北沢さんの小説に続き、和田さんの小説も万人向けするタイプの小説のほうです。時代小説なのに読みやすいという点と、展開の起伏が上げ下げがよくあり、飽きさせない点でおすすめな時代小説です。ただ、和田さんの小説は、落ち目な侍や、地味な武将、城主も、和田さんが描くとかっこよくなる、「登場人物補正」が強くかかっている気がします。


感想ネタバレ↓
和田さんの作品は初です。和田さんの作品ですと、「のぼうの城」がダントツに有名ですが、なぜこちらを読んだかというと、単にネット上の評価がよかったからです。実は、「のぼうの城」は、「忍びの国」後にすぐ読みました。その2つを読み終えて私の好みは、「のぼうの城」の方ですね。どちらにも言える印象としては、とても読みやすく、文章が砕けている印象があります。会話文が現代のセリフであり、そこが起因しているでしょう。

「のぼうの城」は、弱い存在が強い存在に対抗する英雄的物語で、気持ちが熱くなれました。フランクなキャラクターや軽快な展開の運びで読みやすいです。ただ、そういう特徴があるので、ひとによって軽い時代小説、浮き気味の時代物という印象があるのではないでしょうか。

一方、「忍びの国」は戦国時代の有名な戦を背景に厭世的な現実をみせていく戦記物です。「忍びの国」は伊賀者の思考に着目しているところが独自です。伊賀に住む忍びや百姓たちの考え方、価値観が、当時の他の国の武士や、百姓と、思考の置くことが違うというところにこの小説の魅力が秘められます。戦国、武士といえば、忠義、武士道など、人としての志を第1と考える思考が有名で、「武士といえば」等、現代人の印象にあると思います(私の主観入っていますが)。伊賀者は違う目線を向いています。生きていくためには、作物を育てて自分の肥しとする必要があります。ですが、伊賀の土地柄、作物が育つのは不向きな土地らしく、そのため、副業として傭兵稼業を、農作業の傍らに浸透していったと、この小説には記述しています。そこで培われた価値観が、つまり「人の心に立ち入り、それにつけ込み利用する」こと、忍びの術にあったようです。それは勝ち残れる術だからです。生きていくことは過酷なことです。その過酷さから学ぶことは、とにかくいかに自分を生かしていくか、術を見つけることです。必死、真剣だからこその伊賀者の選択だったということでしょうか。


1576年、天正4年という書き出しで始まります。主人公は無門という忍びです。百地三太夫という有名な地侍の下人です。伊賀一国のうちでも「その腕絶人の域」で他国の大名からお呼びがかかる忍びです。実際の存在した忍びではないと思います。話は天正伊賀の乱の頃の話です。史実をもとに書き上げられています。なぜ、織田信雄が伊賀の国を侵攻することに決めたのかや、伊賀惣国一揆なる66人の地侍の同盟が織田家サイドに伊賀の攻めを行うように、策略があったことが語られていきます。伊賀衆の怖さが垣間見えます。

無門という存在は、物語上でとても強い存在ですが、わりと影が薄く、天正伊賀の乱がどのように行われたか、見ていくための進行役に感じられました。実質の主人公は、伊賀衆の下人全体と、織田勢の北畠家の日置大膳亮たちですね。結構泥沼なシリアスな状況、時代、舞台を書かれていますが、和田さんの文章は、そんな暗黒時代も明るく見せている腕があり、それがすごいところだなと思いました。手持無沙汰の時、何も考えず、読める小説だと思いました。




素敵な言葉どもが記事の跡
織田信長の次男・信雄の言葉(※小説の中の)
「おのれらにわしの気持ちがわかるか」
重臣に向かって泣きながら訴えた。
「生まれてより人に優れ、誰にも負けず、他人も羨むおのれのような武者に、わしの気持ちがわかるか。おのれらがわしを慕っておらぬことぐらい承知しておるわ。じゃがおのれらはわしの父ごとき男を親にもったことがあるのか。天下一の父を持ったことがあるのか。何をやっても敵わぬ者を、おのれらは父に持ったことがあるのか」
そう言うとその場にへたり込み、あとはしくしくと泣き続けていた。

無門と鉄の会話
鉄は、無門を横顔を見せたまま、
「無門よ」
「ん」
「恥を知らんか」
無門は片頬をゆがませた。
「知らんな。忍びってそういうもんだろう」
戸を閉めた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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