小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
2000/07123456789101112131415161718192021222324252627282930312001/03
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)
(2009/08/25)
恒川 光太郎

商品詳細を見る


前書き
今年も冬が終わり、春が来る前に雷がくる。

私はそれがきらいだ。
とにかく嫌いだ。

みんな、突然消えるのだ。
雷季がくると、消えてしまう。
私はそれがとても怖い。
みんなもそれが怖い。
だから、みんなは雷の時期はじっとしてる。
消えないようにじっとしてるのだ。

だから、東京という外にある町をうらやましく思う。
春夏秋冬しかないと聞く。
ああ、ダメダメ。
だめだ、こんな悪い事を思い浮かべたら、私がきえちゃう。
悪い事をすると消えてしまうのだ。

遠くで太鼓を叩くような音がした。
今年も雷の季節の到来を告げた。


ジャンル・タグ 
ホラータッチなローファンタジー・現代・重量感(小)・偽りが信頼を上回る時・風が憑く魅力・人間をかぶった悪魔・なぜか懐旧の情

評価   
素敵 

砕けていてとても読みやすいですね。雰囲気としては乙一さんの雰囲気を思い起こさせました。ボリュームも適切、文章のタッチは軽め。薄暗く幻想的な物語に引き込まれます。

感想ネタバレ↓
この小説はなんといっても、タイトルと表紙に惹かれました。こういうタイトルは大好物です。そして手をつけてみました。上記にある通り、乙一さんの軽快なタッチと、悲しい切なさ、暗を漂わせる空気感、幻想の雰囲気に近いと感じました。乙一さんと違う点は、乙一さんより一タイトルのボリュームが豊富で、暗より明の部分が少し強く、饒舌でしゃべりたがり、くだけたタッチ、自由が割と幅を利かせます。怖さはぼちぼちです。怖さが苦手でもきっと読める内容ではないでしょうか。

さわりの内容は
私達は日本の何県という町に住んでいるわけですが、その日本の外には私達のしらない地域、穏という町があります。海外ではありません。海を越えません。東京の外側に向かっていくと穏という町が存在しているのです。穏という町は閉鎖的で、しきたりに従い、内輪のみで生活をします。例外を除いて現在の私達の生活に関与しません。穏にはひとつ特徴があって、4つの季節にもうひとつ季節があります。雷が鳴り落ちる季節です。穏の人々にとって雷李はとても慎重にならなければいけない季節です。雷とともに到来する風のお化け、鬼が人をさらっていきます。穏には不思議なことがさまざまありました。主人公の賢也はその不思議を目撃する事になり物語は進みだします。

良かったと思うのは、特に、章ごとに主人公が変わり、それぞれのキャラが思惑、価値観が独自持っていたのが私好みでした。例えば、賢也は遠慮がちで、相手を肯定的に取ろうと組む優しさがあるけれど、ナギヒサは純情さが人一倍ことと、その純情さで接した現実の落差に彼の正義感が捻じ曲がって、「人の心には裏にある」という観念を持っています。ただ、色々なキャラがでてきましたが、重要だと思われるキャラが案外あっさり後半で出て来なくなるのは、ちょっと物足りない気がしました。物足りなさという意味では、雷季という季節も物語の中で印象づけしてもよかったのではないかと思いました。雷季は案外、序盤だけしか絡まなかったので。じゃあ、どうすればよかったんだって言われたら、無責任なことに全然わからないですが。

怖がらせるタイプのホラーではなく、じわじわとしみる感じで、それでいて、薄暗い幻想的なファンタジーな世界観。個人的には怖いというよりはぞっとする感じです。怪奇が怖いというより怪奇を利用している人間の感情にぞっとします。一意見として、だれでも考えていることはたいして変わらないのかもしれません。悪とはどんな人間にも含まれていることかもしれません。極端な話、普通の人間と殺人鬼の考えている事に大差ないと考えられます。観念、志し、思想は違えど、頭の中で考えられる、考える範疇はどんな人でも同じなのではないでしょうか。

違いはなんでしょう。
私達がふだん頭で考えている事ということは他の人から見て正しい、正しくないに関わらず、感情的に正しいことでしょう。どこに違いが生じるかは、その正しいと信頼していることを自分が直面する現実からくつがえされることで決まるのでしょう。問題は自分の中の正義が、打ち破られ自分に対して信頼を無くしたときがまずいだと思います。

正義という棒がポッキと折れたとき、自分に対して懐疑心が生まれます。それはとても不快なことです。だから、自分の懐疑心が生まれないために正義を折ろうとするものに対して抵抗し、一切合切、正義を打ち破ろうとする悪の根源を絶とうとします。あるいは、何度も不快を受け入れつつ自分の正義を修正していきます。すごく断片的ですが、そのどちらかによって、例えば賢也とナギヒサの特性などが決まったりするのではないでしょうか。人の心にある闇とはとてもなじみのある気持ちなんだと思います。それを受け止めるか、受け止めないかで一般人と殺人鬼の括りができるのかもしれない。この物語はそのへんをうまく描いています。

なんというか自分で書いてて、上記の文は言葉足らずというか、うまく表現ができません。うまく整理できないですが、こういう感情が抱いたということで残しておきます。うまく表現できそう機会があったら、後々付け加えたいと思います。

それにしても、なんか最後はいい形で決着しましたが、中盤の勢いからすると、少し尻つぼみはありました。最後の主人公の状況は、そばで傍観している私から見るとあっさりも切なく、寂しさだけが残る感じでした。風が去ると、何一つ夢の中へ持ち去ってしまうんですね。そこで奪われたことに腹を立ててしまうのが人間というものですか。


素敵な言葉どもが記事の跡
闇番の大渡さんと亡くなった婦人の会話
「この道をずっとお戻りなさい。ここ墓町を通り抜けて、また戻ってください。左手に、そう、海の方へずっと歩いてください。肉体無き者だけが歩く、彼方の国への道があるでしょう。何もかも忘れてしまえばいい。私には分かるが、あなたの人生は、きっと幸福だった。問題は何も残っていない」

婦人の表情は輝く。
彼女がここに来た時のつらい湿った表情とは、反対の顔だった。

「もちろん、幸せでしたとも」婦人は笑った。
「ご親切にありがとうございました。そうね。いわれた通りにします。なんだか最後に素敵な門番さんに会えて、良かった」

男はいかめしい顔つきのままだったが、頬の筋肉が微かに引きつったのを私は見逃さなかった。





最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
にほんブログ村 本ブログへ

関連記事

この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
この記事のトラックバックURL
http://kkk12liliyom.blog69.fc2.com/tb.php/73-81ecb35c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。