小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/09)
飛 浩隆

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前書き
表紙を見ている。

青い空に白い雲。
さざなみもたたない綺麗な海面が一面に広がっている。
サラサラの白銀の砂が堆積し、ビーチができている。

そして、ビーチに足を突っ込んだ自転車がひとつ。
黒の装束のひとがひとり。
ここからでは性別をうかがい知ることはできない。
その姿は周りの美しい景色とは対照的に、暗い雰囲気を漂わせている。
黒い影は心持ち濃い気がする。

今、ビーチがとても美しく輝かしいということは、
ビーチに隠された陰険な偏執的な闇を象徴しているように私には感じる。

美しさとはなんだろうか。
醜さというものを踏み台にして、より輝くのものではないか。
醜さはないがしろにされ、黒さというイメージを定着されてしまう。
今、黒い影が思い描いていることを私は想う。

黒いそれが背負った重苦しい雰囲気で、きれいな浜と青い海はより一層、光かがやく。

ジャンル・タグ 
SF・南欧風の仮想リゾート・重量感(大)・JoJoなマトリックス・「役割」という残酷さ・「キャラ設定」という残虐性・AIと書いて「奴隷」・饒舌な恥辱さ・意味不明な形容詞

評価  
最高  

『廃園の天使』シリーズ第1作。IT、PC、ネット、バーチャル世界などの情報技術の概念、言葉が浸透したからこそ、理解できる一冊。私達はそれらを日常で自由に利用する立場ですが(もちろんこのブログを利用していることも)、利用される側(PCのパーツ、データ)からみたら例えば、本書のような立場でみれるのかもしれない。残酷で性的で不可解で自由度に幅を利かせた物語であり、読みやすくはないけれど、物語に夢中になりました。※残忍な表現、性的な表現がたくさん含まれているので、苦手な人は注意です。

感想ネタバレ↓
その発想はなかったです。

飛さん自身、二番煎じなストーリー設定とおっしゃっていますが、方向性が同じでも表現の仕方が他の作家の方とひと味違うので、仮に同じストーリー展開の小説があったとしてもそれぞれ、楽しめる部分は満載に含まれていると感じています。はじめて飛さんの小説を読みたいと思ったのは、この小説の表紙を見てからでした。こういうのすきなんですよね。美しい絵画のビーチに思わせぶりな人のひとり。私なら手にとってみたくなる表紙でした。

ここから、他の読書家の方の評価をぱらぱら読んで、SFってこともあって評価数は少ないですが、評価が良かったのですぐその足で買いにいきました。

・・・なかったです。

でも、「象られた力」は本屋さんに置いてあり、楽しみはとっておいて読むことにしたのです。それで、飛さんの本はあまり本屋さんに置いてないので、普通にアマゾンで。象られた力がもし、面白くなかったら、正直、こっちのグランヴァカンスも買っていなかったかもしれません。癖が強い短編集でしたが、デュオはなかなか。象られた力は全部読むのが面白いですがしんどい小説でした。

肝心のグランヴァカンスですが、文章は、堅くもなく、軽い感じでもない。いつも通り、形容詞、形容動詞、副詞表現が多いです。しかし、前の作よりは違和感はなく、自然に流れました。読み終わって感想は、無駄にエロスで、心理描写が多彩、どこか寂しげな幻想ファンタジー。なんとなく、AIの感情が浮き気味だったのは、やはり、苦痛を欲する情欲に縛られているからなのでしょうか。この情欲がなければ、もっと自由に羽ばたく明確な自我というものに目覚めるのではないかと思いました。

最初読んでいくと、文字で語られる、美しい風景が見えてきます。そして、視体と呼ばれる魔法の石のような物が、ストーリーの要になります。中盤から読み進めていくと、エロを表現したシーンや殺し方がむごいシーンが度々でてきます。抵抗を感じるかもしれないので注意が必要です。ある意味、そのバックグラウンドの美しさと官能的、残忍さのギャップがこの本の魅力だと思います。ただの残忍だけでインパクト狙いの小説とは一味ちがいます。

インパクトという意味では、スウシーの件は、ゾッとしました。怖くてじゃありません。突如、狂気で奇怪な行動をとるからです。なんで、誕生日にそんなこと、残忍なことができるのだと。特に、奇怪な行動をとらなそうな実直な人だと思ったから、余計にゾッとさせられるのです。しかも、奇妙な事にスウシーの姿にみたジュリーはそれを喜ぶのです。ええ、どMかぁぁぁかー?!普通にこんな現実でされたら、精神崩壊、人格崩壊レベルものです。しかし、真相は終盤に語られます。酷なのは、AIにとって辛い事なのに、それを本能的(設定的)に欲してしまうこと。AIに感情がなければどんなに悲しまずにすむかと思うと。。。

この物語には、リアル世界に酷似しているバーチャル世界が存在します。私たちのような人間(ゲスト)は疑似体験ができます。それはパソコンのバーチャル世界とは違います。もっと実態に近いイメージです。ゲスト側からの主観がわからないので、どういう風にこのバーチャル世界に行くのかわかりません。読んだ印象からいくと、PCの情報を直接脳に働きかけ、あたかも、その空間にいるような感覚を体験しているように欺瞞させることが、区界を作った狙い。要するに、映画のマトリックス。

ランゴーニとジュールはシリーズの要になってくるんでしょうかね。3部完結とかではなく5部完結+α(短編)ぐらいシリーズ続編が出てほしいです、個人的は。

私自身もお金を払ってゲストとなり夏のビーチを満喫してみたいに気になります。


ヒトメモ
硝視体(グラス・アイ)・・・他のどんな事物にもできないやり方で、区界の物体や現象に働きかける。視体の変容の力を、ふれるものの心象を使って細かくコントロールすれうば、意思の外側の世界を変化させられる。コントロール、修練可。視体はを光(そして要素)を取り込み、抽象化する。意味あるエッセンスを抽出。個性をもつ。光やさまざまな感官の感情、官能のサンプリングマシンでありシンセサイザ。人は視体を覗いて視点、世界の感じ方を借りることができる。
視体(アイ)・・・硝視体の略語
コットン・テイル…まるいふわふわのしっぽという意味。球体にうぶ毛がある。能力は不明。
冷たいマティーニ、絹北斎、割れ鏡、紫碗律(アステリズム)、ハンドベル、耳の渦
白銀の猫・・・特異な視体。空想の生き物を閉じ込めた視体。二匹のつがいの猫は、青磁のような瞳と、血よりも赤い舌と、輝く銀の毛皮は猫の怒りに感応すると、するどく起位し、筋肉のバネじかけで猫の毛が打ちだされる。
スノースケープ・・・冷気の外部化。
火の親方・・・急激な温度変化に耐えられず、蜘蛛の残骸は塵となって、吹き飛ばず。衝撃波は厳密に指向制御されている。
黒いグリッド・・・黒いというよりは、暗いに近い純粋な球体。光を通さない。「発芽」黒真珠の表面からグリッドの芽が伸びる。黒い格子が幾何的なパターンを描いて発展していく。
糊・・・不定型で、アメーバ状のイメージ内包する視体。糊状で柔らかく不定型、強力な粘着力がある。
ファムファタル・・・女が生活する小部屋という現象
三面鏡・・・自分の幻影をつくり出す
クリスタル・シャンデリア・・・流れ硝視と呼ばれるが全能ではなく万能

流れ硝視(ドリフト・グラス)・・・全能の硝視体
夢幻アセンブラ・・・区界の事物と現象のすべてを思うがままに組み替え、作りかえることができる
摂理のコントローラ・・・区界を規定する基本設定にさえアクセスし世界律に干渉できる

クロノマネージャ・・・刻む1050年間
数値海岸(コスタ・デル・ヌメロ)・・・仮想リゾート、「夏の区界」
西の入り江・・・長い砂浜。一番大きい。リゾート、漁港、町役場、時計塔、警察署
東の入り江・・・丘。小規模。鉱泉ホテル、警察分署
鳴き砂の浜・・・<音>を飲み込む。音ではなく、振動のようなもの。
アイデンティティ境界
グラン・ヴァカンス・・・永遠に続く夏休み

素敵な言葉どもが記事の跡
「決めろ。『しかたがない』ことなど、なにひとつない。選べばいい。選びとればいい。だれもがそうしているんだ。ひとりの例外もなく、いつも、ただひとりで、決めている。分岐を選んでいる。他の可能性を切り捨てている。泣きべそをかきながらな」



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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