小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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野生の風 WILD WIND (集英社文庫)野生の風 WILD WIND (集英社文庫)
(1998/06/19)
村山 由佳

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前書き
彼女の名前は飛鳥。

彼女は彼女の感性で、
仕事も、趣味も、恋愛も自分の納得行く形で今まで暮らしてきた。
縛られない彼女は飛ぶ鳥の名のためなのか、
世界中を旅をするのが好きである。

渡り鳥のように土地から土地へ羽ばたき飛んでいく。
世界のあらゆる場面に遭遇した。
異国文化、価値観、情勢、貧困。
ベルリンの壁崩壊もこの目で見た。

彼女が彼に出会ったのはこのときだ。
偶然だった。
一目ぼれかもしれない。
今、「その時、彼に出会ってなかったら...」を想像する。
今頃、彼女自身はどんな彼女に遭遇しているだろうか。
野生の風を受けた後になっては今はもうわからないことだった。

風を受けようと、受けまいと、
ただ常に分かり知っていることは、
やっぱり彼女は猫アレルギーであることぐらいだった。


ジャンル・タグ 
国際派ヒューマンな恋愛小説・バブル期・重量感(中)・アフリカの風に抱かれること・何を大事にしていくか・一目惚れ、そして...

評価  
良書

本の雰囲気は、インテリでおしゃれだが、独りよがり。個人的には会話文が若干、時代を感じます。読む時期は気温が高くなる途上、5~7月の季節がおすすめです。アフリカ、南米、東南アジア、南欧等。旅行して帰ってきたときなどに読んだりすると感じるものがあるのではないでしょうか。※官能的な表現が含まれています。

感想ネタバレ↓
まず、村上さんの小説をはじめて読む場合はこの小説より他の代表作「天使の卵」などから読むことをおすすめします。なぜかというと、この小説の時代背景がどちらかというと旬ではなく、状況設定が一般的でないので総じて親近感、共感が湧きにくいではないかなと思ったからです。旅行好きの人(熱帯地域によく行く人等)はどう思うかわかりません。最後まで読めば良い小説と分かるとおもうですが、序盤、中盤がいまいちであり、かつ時代背景、状況設定の理由でトリッキーな感じがするので、村上さんの小説を好きになってもらうためにもこの他の小説から個人的には「天使の卵」「青のフェルマータ」などから読んで欲しいです。この小説の面白さは終盤から。序盤、中盤は個人的にはいらないです。序盤の一連の流れは、劇的に演出しようと思って書いたような出会い方がわざとらしすぎて個人的にはあまりグッと来なかったです。一馬の軽いノリにプライドの高そうな主人公が自然と溶け込んでるのがいやでした。

内容は主人公、多岐川飛鳥の生い立ちから始まります。彼女の家族はどんな人たちで、彼女はどんな興味を持ち、どんな人と恋愛してきたのか、等が語られます。彼女の興味があるのは染め物、染料、色の世界。染識家。世界の各地の人と恋愛を育みました。そして最初の山場、ベルリンの壁崩壊時、写真家(たぶん)である藤代一馬の出会いから物語の車輪が動き出します。彼女にとって、一馬はなぜか一目ぼれしまう存在でした。高校からの顔馴染みの祥子との仕事の出会いを通じて、ベルリンの出合いから結びついた糸は近づき始めるのです。

私が思う主人公の特徴は行動力があり、インテリ気質、プライド心が強い女性で、恋人の一馬は石田純一のようなおしゃれインテリで軽いキザな、女たらしの男性です。ただし、最初と最後では、どうもキャラクターの性格が変化してる感じがします。キャラクターに一貫性がないということです。それが不満のひとつです。後半の性格は、飛鳥は行動派で一匹狼、一馬は、最初の軽さがあまりなく、気の利く、物わかりのいい人みたいになっています。ストーリーが進むと、年月が経過してるから価値観が変わってきたとも言えなくはないですが、それはそれで、説明してほしいです。

<本文より>
どんなに手間のかかる大作であっても、飛鳥は染めから織りまでをすべて一人でこなす。糸から染めて織る場合もあれば、裂き布で織ることもある。パッチワークや刺し子の技法を使うことも、刺繍をほどこすことも、時には、草木や染料をじかにこすりつけて染め絵を描くこともある。仕事である以上、やりやすいものなどないと言っていい。それを承知で、なお気分が乗らないときは、相手がどれだけ出すと言っても断った。忙しいから。旅に出るから。暑いから、つまらないから、あなたが好きになれないから。有無をいわせない断り方ならいくらでも知っている。


職業というよりは趣味の延長ということでしょうか。こだわり、質の高いものを仕上げたいという志はすばらしいと思います。だれしもができることはないし、貫いていくことはなかなかできないですよね。ただ、みんなこんな風に気分で、相手が気に入らないからで、生計を立てていける世の中とはなかなか難しいでしょうね。私にはそれは自分勝手で、自己中にしか見えないですね。

上の文章の割には、後半で、一馬と恋愛関係になったときに、染織を捨ててもいいみたいな文章を見たときは、がっかりしました。あんなに誇らしげ、こだわりをもっていた染織をそういう扱いしないで欲しいです。捨てないにしても、冗談にしても。「だったら最初から、気分が乗らないときは...とか言うなよ」って思いました。ただ単にかっこつけたいだけでしょ、って。

一馬の「命を撮っているつもりです」では、飛鳥はわしづがみされたようですが、私は、逆でした。命撮っていると思っているというおごりが気分を萎えさせます。「アフリカの命を撮る」という使命、責任を持っているみたいなずうずうしさにしか感じないですよね、その言葉が。飛鳥をわしづがみするための言葉、かっこつけるための言葉でしかない気がします。

上記で述べた通り、前半、中盤部分に退屈を感じ、あまり共感できませんでした。というのも、中盤まではネタバレの面白さを小出しにして最後まで真相、ネタバレを隠すように語られてきたので、場面ばめんの主人公の気持ちを理解できなかったり、共感できなかったからです。地の文でも、会話文でも、間接的なので、正直「本当の事言ってよ」と思っていました。文章をおしゃれするために着飾っていてつまらないです。

主人公と祥子の関係は、高校時代以来の知り合いで、たまたま仕事の都合上で関係が再開し、付き合うようになったのになぜ、親友みたいな扱いなされているんでしょうか。だったら、最初から幼馴染の友達関係という設定で良かったような気がしてなりませんでした。どちらも、他に友達ぐらい、いるでしょう。それなのに、祥子しか出てこないのは、飛鳥は正義、祥子が悪役兼、物語を進めるための歯車役を担うための構成設定と、だとしか思えません。悲劇のヒロイン、飛鳥を引き立てるためだけの祥子と浩司に、もっと愛情があってもいいんじゃないかなって思いました。



しかし、ネタバレし始める終盤から、面白くなってきます。終盤は赤裸々な感じで、展開がいろいろな方向に向いてい私は好きでした。女性の身体的な面や精神的な面に触れていますが、そこが劇的で面白いわけではありません。第一そのことで思い悩んでいる人も実際に世の中にいるでしょう。そういうことが好きと言うことではなく、苦しい経験、悲しいサガに対して結果、何を失い何が得られたということ、あるいはその結末から何を大事にするかということを伝える内容になっていたから良いなと思いました。ただ、この意見は私の主観が多ぶん入っていますが。ともかく最後だけは出し惜しみしていない文章に構成されていると思ったので、個人的にはよかったなと思っています。私は書けないくせに上から目線ですみません。

最後は主人公にとって、悲しくても、価値ある経験であったと心から願いたいと思います。
仮に同じような経験のひとがいるのなら、悲しみを背負うのではなく、価値のある経験であってほしいと願わずにはいられない思いにさせられました。


素敵な言葉どもが記事の跡
私もできるだけ思い浮かべようとしてみます。
幸福とは、ひとつイメージに過ぎない。自分の望む幸福を、あらかじめ具体的に思い描いていた者だけが、自分が幸福である時にそれに気付くことができる。



猫にアレルギーをもつ飛鳥。

うつむいて、猫に頬をすり寄せた。

「おまえのせいよ」

と、飛鳥はささやいた。

「こんなに涙が出るのは、きっとおまえを抱いているせいよ」

飛鳥は、泣いた。誰も見ていない時でないと、うまく泣けない自分が悲しかった。


たまには浸ってもいいんじゃないかなと思います。




最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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