小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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カラフル (文春文庫)カラフル (文春文庫)
(2007/09/04)
森 絵都

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前書き
死んだはずのぼくの魂が、見ず知らずの天使に行く手をさえぎられて、

「おめでとうございます、抽選に当たりました!」

と、もう一度生きることの権利を与えられたのです。
前世で罪を負ったぼくにとって幸か不幸か、ぼくの魂は天使に勝手に生き還されたのです。しかも、知らない意識不明の人間の身体に乗り移る羽目になりました。

生きる代償は、修行と称して乗り移った人間の人生をうまく軌道に乗せていくこと。


ジャンル・タグ 
ヒューマン・現代・重量感(小)・「自分」を見つめなおす自問自答・赤裸々な想い・岐路に立つ時・誰だってそうじゃない?

評価  
最高  

最近、いい本にあたるなって思います。この本もいいです。小説でありながら、教訓書。こどもの時は、あるいは大人になってからも他人に純情を夢に見るもの。しかし、それは、年を重ねるごとに急に裏切られたり、ゆっくり汚い部分が見えたりしてきます。そうやって、大人の階段をのぼっていくんだと思います。けれど、皆がみんなうまく思い描いてた純情が壊されるのを受け入れられるわけではないだなって。この小説では家族に対して思っている事、友達に対して思っている事を汚い部分も包み隠さず、コミカルかつ、赤裸々に語ってくれます。岐路の時、高校受験、大学受験などの自分が何をしたいかを考えるきっかけ・ヒントになるかもしれないです。季節は意外にも、寒い季節です。晩秋や冬に読むとムードが出るのかも。

感想ネタバレ↓
表紙がかわいいですね。
適度にくだけていて読みやすい文章が特徴。だれにでも読みやすいように、部分的に漢字がひらがなになっていたり、漢字を抜きすぎない工夫は漢字にルピーを使って説明していて、老若男女仕様です。会話文はコミカルチックでだけど会話のニュアンスはとても自然です。主人公含め、同級生のひろ、佐野唱子ともに中学生とは思えないぐらい垢抜けた会話です。リアリティとは対照的です。明るい文章が暗くて重い内容にも緩衝剤となっています。一見、印象と閃きを大事にする直感的な著者さんだと思ったら、起承転結がはっきりしていて構成が上手わかりやすいです。道徳的で本質を理解して諭す内容・ストーリー。

内容は
死んでしまった「ぼく」の魂は小林真という薬を服用して自殺未遂した14歳の男の子に乗り移ります。「ぼく」は乗り移って真とその家族の関係にギクシャクして歪みがあるのを気付きます。家族にも、母親は不倫して、父親は利己的な人であり、兄は弟の真を見下す事ばかりする人だったのです。前世の罪を清算し「ぼく」がもう一度生き返るために真として過ごすことに残された時間は1年間。小林真の「ぼく」の修行がはじまるのです。


「ひろかもいっしょだよ。きれいな服も、バックも指輪も、ひろかはほしいの。大人になってからほしいなんて思ったことないの。どうせひろかの体なんておばさんになったらもう価値なくなっちゃうんだし、価値なくなってからきれいなもの買ってもしょうがないもん。エプロンやババシャツの似合う年齢になったら、ひろかはおとなしく、エプロンやババシャツを着るよ」

人生はやり直しがきかないということですね。
女も男も14歳であろうと44歳であろうと、綺麗な心、汚い心が半分こで、私達は平静を保っているですよね。他人と違う事が気になって「自分は変わり者、外れた人間」と自分の殻に閉じこもる小林真は、そんな内向的な自分に話しかける桑原ひろに恋心をいただくのです。そんな彼女も真が考えているよりもっと利己的な現実的なことを考えていたのです。その事実に真の「ぼく」は愕然とするのです。それは、母親、父親、兄、同級生の早乙女くんも、佐野さんも誰もが人にはださないような裏側をもっているんでしょうね。この物語では、真の「ぼく」と家族は互いの本音を聞き合うことになりますが、正直、自分達の生活を振り返ったとき、小説のように真摯に家族や友達(あるかもしれないけど)とぶっちゃけトークするなんて恥かしくてできなかったりします。この小説はそこのとこズバッと言ってくれます。母親の話も、ひろの話も、父親の話もどれもが、そうそう、と思いながら「その本音がなかなか出ない」ところを的確について森さんに感嘆。逆にそういう少しドロドロした本音ばかりが本心、人の基盤だと思ってもいけないとも、森さんは言ってくれています。

この小説は先どのような展開がくるかはだいたい読めるではないでしょうか。だからといって、この本の価値が下るわけではなく、読める流れの中で、感嘆される内容がつまってます。道徳的で、迷いがあるときに明るく迷いを解決できる足がかりになってくれる小説ではないでしょうか。

「みんなそうだよ。いろんな絵の具を持っているんだ、きれいな色も、汚い色も」
人は自分でも気付かないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。


ほんとカラフルですよね、この世って。私の色って何なんでしょうか。気になる。




素敵な言葉どもが記事の跡
芸術のセンスに秀でて、それでいて内気な真にあてた手紙。
ほんの少しだけあなたに何も持って生まれなかった人間の悲しみを知ってほしかった。何かを持って生まれた素晴らしさを感じてほしかったの。親馬鹿のようだけど、あなたはあなたの非凡さに、もう少し誇りを持ってもいいように思います。絵だけに限らず、あなたの内面の豊かさや、鋭すぎるほどの感受性にかんしても。
・・・中略・・・
あなたをいつまでも待ってます。
最後に。私は、あなたの中にある普通の部分も、非凡な部分も、どちらも心から愛しています。
母より。


イケてない方に属する早乙女くんと真二人だったが。
ぼくはもうみじめではなかった。
みじめというのは、昼休みをひとりですごしたり、移動教室までひとりで歩かなければならないことをいう。となりにだれかがいるというのは、ふりむくたびにじんとなるほど、いちいち、うれしいことだった。

父親の想い
「お前の目にはただのつまらんサラリーマンに映るかもしれない。毎日毎日、満員電車に揺られているだけの退屈な中年に見えるかもしれない。しかし父さんの人生は父さんなり、波瀾万丈だ。いいこともあれば悪いこともあった。それでひとつだけ言えるのは、悪いことってのはいつか終わるってことだな。ちんまりした教訓だが、ほんとだぞ。いいことがいつまでも続かないように、悪いことだってそうそう続くもんじゃない」

母親のことを思い浮かべていた。
父親に隠れて不倫していた母親。
その母親をパワーみなぎる救世主のように語る父親。
この地上ではだれもがだれかをちょっとずつ誤解したり、されたりしながら生きているのかもしれない。それは気が遠くなるほどさびしいことだけど、だからこそうまくいく場合もある。

なぜかかっこつけるなぁ、早乙女くん

「昨日うまく仲良くやっていたやつも、次の朝向かえたらまた、気まずい相手にもどってたわけ。そのとき思ったよ。今日と明日はぜんぜんちがう。明日っていうのは今日の続きじゃないんだ、って」


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