小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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夢の守り人 (新潮文庫)夢の守り人 (新潮文庫)
(2007/12)
上橋 菜穂子

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前書き
<第3章 新ヨゴ皇国>
今眠りにつけば、理想郷にたどり着く<夢>を見る。
<夢>を見ている時の私は身体とは離れて、魂だけが連動する。
よかった。ある旅芸人が起こしてくれた美しい歌によって、
<夢>、私の魂は、<花>の位置を察知することが出来た。

私は欲しかった理想が<花>にはある。
今、私は旅芸人の歌という<風>が漂わせる<花>の香りに、<花>という理想郷に対する激しい羨望感にかき立てられ、眠りについたのだ。幸せだ。<花>にいることは幸せだ。

しかし、<花>の管理者、<花番>から聞いたのだが、<花>が咲いている時間とは短いものなのだ。
<花>の種が実れば、<夢>、私の魂も散り、私は...
この世界から出たくない。目を覚ましたくない。


ジャンル・タグ 
ファンタジー・重量感(小)・中華モンゴルな皇国王朝・眠りを誘う美しい歌・不幸から生まれる「・・・だったら」・夢を糧にする花

評価   
素敵 

守り人シリーズ第3作目。上橋さんの諭すようなファンタジーが今回も私達を物語に引き込みます。前作2作に比べてしまうと少し見劣りしてしまうかもしれません。上橋さんの夢に対する哲学を見ます。物語は引き継ぎですが、一話完結だから「夢の守り人」からも読み解けます。ストーリーの季節は夏です。

感想ネタバレ↓
精霊の守り人と近い展開の仕方です。話はある旅芸人の歌を聞いた人達が皆眠りに入り、何日間も眠り続けるというふしぎな出来事が起こる。そこで抜擢されたタンダ・トロガイがその真相を突きつめていくストーリー。

トロガイがタンダに話していた<花の夜>の話は主観に依存した精神世界の話で、抽象的でイメージしにくいなぁと思いました。実体の別の世界のナユグに、<花の夜>がナユグに訪れるってあったんですが、<花の夜>の正体が漠然として、まさに、夢、内なる世界、頭の中で考えていることにしか思えません。ほんとにナユグに<花の夜>という実体があるのか不思議でなりません。例えば、死後の世界には、霊界というのがあると言われているのと同じぐらい腑に落ちない部分ですね。

トロガイって、もっと、癖のある会話の相手を突き放すようにしゃべる人、常人にはない変人だと思っていたら、意外に喋りが常人でしたね。なんか残念です。考えている事も謙虚で、正直キャラに合わない印象がありました。個人的にはもう少し一匹狼なキャラクターであってほしかったです。それでこそ、キャラがたってるって言えますね。
とはいえ、話を進めていくと、
<本文より>
タンダの兄弟ノシル
「トロガイさんよ。あんたえらい呪術師のはずなのに、なんで、おれの娘を助けてくれなかったんだ?あっちこっちの村で、噂になってるんだぞ。これは、たちのわるい呪術師が、人の魂を狩り集めてるんじゃなかろうかってな」
・・・中略・・・
トロガイ
「なにかの時にはささえてくれる人の輪がある。二十歳まで、わしも村人だった、それが、いかに心強いもんかよく知ってる。わしらのような、はずれ者は、気楽なかわりに、ささえてくれる手がない、なにか起きれば、こうして疑われ、にくまれるのさ」


私もタンダの親族の村の人間と同じで、トロガイを呪術師だから、変わり者、という先入観で入っていて、トロガイという人を見ていなかったんだと思い直しました。孤独という悲しみを乗り越えてきたトロガイがいます。


<本文より>
「・・・人はね、生きるのに理由を必要とする、ふしぎな生き物なんだよ。鳥も獣も虫も、生きていることを思い奈
悩みはしないのにね。ときに、人は悩んだ末に、自分を殺してしまうことさえある」


鳥になってみなきゃ、本当に悩みなしで生きているのかわかりませんが、少なくても人は理由をすべてに求めようとします。理由をつけないと物事を理解できない、整理できないからでしょうか。私も現実に苦しくなったときに理由を求めてしまう気持ちがよく分かります。小説と関係ないですがパク・ヨンハさんの出来事は衝撃でした。一種の華やか立場にいながら、悩みの苦しみにたっていたのでしょうか。ご冥福をお祈りします。


今回はタンダとトロガイが事実上の主役ですね。
<本文より>
「おれにはね、人はみんな<好きな自分>の姿を心に大事にもっているような気がする。なかなかそのとおりにはなれないし、他人には照れくさいていえないような姿だけどね。少なくても、おれはその姿を持って生きてきた。そして、どうしたらいいかわからない分かれ道にやってきたら、どっちに歩んでいくほうが<好きな自分>かを考えるんだ」

これがいわゆる目標、到達点としての夢というわけですね。夢にもいろいろな意味があるわけです。


今回の物語には夢という哲学の上橋さんなりの想いが詰まってますね。「もし、王位継承の醜い陰謀に巻き込まれていなかったら、」、「愛情ゆたかな農民の家に生まれていたら」、そう、違う人生を歩んでいたのに、という夢を描きます。

<本文より>
「もしって、いうのは、苦しくなったときにみる夢だよ。目覚めてみれば、もとの自分がいるだけさ。」


どんな大きな不幸だって、小さな不幸だって身の上に降りかかれば、「もしも」の感情は浮かぶのが人間ですよね。それは、ごく平凡な人の人生であれ、派手な人生を歩んでいる人の人生でも、引き起こされるものでしょう。上橋さんがあとがきでこの作品を他の作品として「鬼っ子」と読んでいるのは、派手な人間ではなく、平凡な人の喜怒哀楽を物語の中にのせたと言う意味で、ファンタジーの華やかさに対しての不安を表わしたのではないでしょうか。一種の英雄ものがたりが、平凡な私達の日常を垣間見させるもの、夢という概念を「夢の守り人」という物語で説明している形に哲学的な響きを含んでいる作品でした。

一口メモ
リー・トゥ・ルエン<木霊の想い人>・・・山の水辺にはリー<木霊>がいる。声の良い歌い手がここで歌うと、リーの呪いがかかる。リー<木霊>に想いを寄せられて一生呪われる。その代わり、身も心もふるえるようなすごい歌が歌えるようになる。

素敵な言葉どもが記事の跡
ひとつひとつ上橋さんの小説を読んでいくと、他の著者さんと違う味を改めて感じますね。教訓言葉が多いなって。常に、私は物語を通して諭されている印象がありました。私の中に浸透します。
すぐに役に立たないものが、無駄なものとは限らない。むしろ、いつ役に立つかわからないものを追い続け、考え続けるという、人の、このふしぎな衝動こそ、いつか新しいものを見つける力になるのだろう。



最後の部分が好きなのです。
シュガのうしろに、<山の離宮>が見えている。まるで雲に隠れたように、水鑑に映った逆さの宮は見えなくなった。朝の光のもとではなんのふしぎもない光景だった。
―そのあたりまえさが、心地よかった。





最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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この記事へのコメント
はじめまして
私も上橋さんが大好きです。
守り人シリーズは少し前に読みましたので
懐かしく感想を読ませていただきました♪

たくさんの本をお読みですね^^
参考にさせていただきます。

2010/06/30(水) 08:14 | URL | 雪 #gBXgG27Y[ 編集]
Re: はじめまして
雪さん
はじめまして。
コメントして頂いて感激です。
感想を読んで下さって、また感激です。
上橋さんの小説はいいですよね。ファンタジー好きとしてはハズレの本がないですもん。
色々な著者さんの本を読んでいって比べてみて、良い本を見つけていきたいと思います。
よかったら、また見に来て下さるとうれしいです。
2010/07/01(木) 05:32 | URL | リリ #-[ 編集]
先日は、ありがとうございました。
こちらにもトラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
2010/09/26(日) 15:56 | URL | 藍色 #-[ 編集]
Re: タイトルなし
藍色さん、ありがとうざいます。
トラックバックさせていただきました。
2010/09/28(火) 14:51 | URL | リリ #-[ 編集]
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2010/09/26(日) 15:17:16 | 粋な提案
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