小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)
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垣根 涼介

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ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)
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前書き
知らないということは、それ自体罪なのだ。

皆がやっていることだからとか、自分で考えることもせず多数意見に流され自分の保身しか目に入らない。自分が良ければいい。日本の中南米移民政策に乗った日本人移民の生活の過酷さなど、見向きもせず、自分の権威とプライドを維持することに躍起になっているのだ。

想像力がないのだ。

相手の立場になって物事を考えることも、その姿勢もない。そのことに平気な顔をしている。そういう人間が国の方針を担う立場にかかわっていること。心の底ぞっとする。本当の罪人とはこういう意識のない人間をいうことをいうのだ。もちろん、お気楽にこの国で生きてきた国民も同類である。腰の据わらない貧乏臭い日本人。割り切ることをしらず、相手の目を気にして自分の行動を正当化しようとする。人が右を向けば自分も右を向くことしかできないのだ。

まず知るべきなのだ。そこから自分の小さい脳ミソで一生懸命考えてみることだ。


ジャンル・タグ 
社会派ヒューマン・1950年代から1960年代・重量感(大)・ブラジル日系移民問題・緑の地獄・4万人の悲しみ・復讐の女神メビウス・「アディオス、パパイ、ママイ」

評価  
最高  

私も貧乏臭い日本人です。何も知らずにここまで生きていました。こんな政策が1950年代にあったんですね。この小説を読み進めていくと、自分の人生の挫折、不幸というものが、全くもって贅沢に思えます。私の不幸など、不幸と呼ぶに相応しくもないと感じてしまいます。それほどに、ここに書かれている物語は不幸という意味でえぐく、悲しすぎるのです。しかも、これが、たった50年前の日本人が経験していたと思うと驚きです。長めの小説ですがストーリーとして躍動感もあり、私は飽きず読みきりました。面白いです。物語として完成度が高いです。だけどそこが問題じゃないです。この小説を読めば知ることができるです。私がこの小説を読んで大切だと思ったところは「知る」にあります。「知らない」じゃなくて「知ろう」と思うことです。なにかは得られるはずです。※官能的な表現が含まれています。

感想ネタバレ↓
自分がこういう風にこの本を評価などしていることがおこがましく、畏れ難いものを感じます。それはなぜかというと、ここに書かれている人々の人生が不幸の地獄を垣間見られるからです。もしかしたら、少し早く生まれていたら、自分の身に降りかかっていた人生であったかもしれないと思うと...

第1章 アマゾンの牢人
をよみおえました。小説をいろいろな本を読んできましたが、これは、悲惨すぎてやるせないです。なんで皆、こんな不幸な人生を歩まなくてはいけなかったのか。特に自らが行為がもたらした過ちでもない、国、政府という正義を気どった偽善者を信じたばかりに悲しい光景を目の当たりすると、アマゾンを送り出した当時の外務省の役人、(いやきっと、それだけではない)許せなくてたまりません。自分達は、高度成長期を向かえ、だれかが、泥土なかを耐え難い空腹とアマゾンという未開の地で苦しんでいるときに、頭の片隅にもおかずのうのうと知らん振りで暮らしていることが事実に。自分たちの都合だけできめた安易な政策方針によって多くの罪もない人々を死に負いやったことなど、頭にないのでしょうね。きっとその現実があったことにも気づいていなかったのではないでしょうか。リオ・ネ・ジャネイロで出合った小太りの女性の日本人の高笑い。。あれは本当に挫けます。ほんの1cm、ねじを止める位置を変えただけで、こんなにも現実は天と地の差を生み出してしまう事実に。自分の人生は何の意味があるんだろうとか考えてしまいます。主人公がアマゾンの奥地クロノイテに戻って、以前使われていた家の前に土盛りが二つ揃って見つかったのには「ああ、なんでだよ?!」もう苦しめるのはやめてくれって。そして、日本で生まれていたら、全く別の人生を歩んでいた少年の悲しさを想います。主人公エトウ、あなたはなんて力強い人なんだ。弟、妻、お金、人生、友人、ありとあらゆるもの、その自分に降りかかった悲しみをすべて背負い込んでそれでも生きていこうとする力強さ、感服します。

第2章 生還者
第1章とはうって変わってアマゾンの地獄を味わって、そのガッツと時の運に恵まれて一財産を築いたアマゾンに渡った日系一世(二世)の人たち。裏社会のドンとして伸し上がった者。経験を積み独立し、従業員を100以上抱える存在になった者。彼らの成功の裏は、辛く暗いアマゾンの生活が影を潜めていました。彼らは恨んでいました。憎んでいました。日本を。日本の政府外務省の役人たちを。

第1章とは距離を置き、話が離れます。主人公たちの状況と心境がだいぶ変化しています。成功はしながらもどこか世間を悲観した目で見ています。それはやはりアマゾンの生活が原因で。彼らの現在の生活とアマゾンの生活の回想を重ね合わせながら語られていきます。彼らの人生は劇的で、されど、淡々としてストーリーが進みます。そしてわかります。彼らが密かにたくらんでいることを知ります。この章の話は米アクション映画の設定を思い起こさせるような、情景が浮かびます。ミッションを達するために策略するもの達。野口の息子の変貌ぶりにはびっくり。わたしだったら、最初の展開からはこのキャラ設定はできません。すごいです。知識もフィールドワークの経験も豊富なのでしょう。考え方に多様で柔軟さが見えます。企業、車、銃、マフィアの構造、車種、用語、仕組みが具体的。表面だけじゃない本質を見ている著者さんだとわかりました。

第3章 色事師
生還者たちの境遇をまったく知らない日本人。元アナウンサーだった井上貴子は現在は製作ディレクターの身なのです。仕事がうまくいかない彼女は変わらないこのマンネリの状況を嫌気がさしてました。心の中で刺激をもとめていました。そんなとき、日本人顔のブラジル人が彼女を新たな展開へ招き入れます。野口の息子ケイと貴子の関係が親密に。

読者側、私たちはこの貴子の状況から物事を見ているでしょう。少なくても私はそうです。日々の仕事の愚痴、対人関係、恋愛事情。垣根さんはいろんな登場人物の思考、行動を具体的に書き上げているのが読んでいてよくわかります。仕事の内容も具体的ですし、それに伴う人間関係や考え方。どうやって情報や考え方を作っているのかきになります。

その頃、生還者たちの計画は着々と進んでいきます。ここでひさしぶりに第1章の主人公衛藤さんが出てきます。彼が幸福になって、その後の続きが少し気になっていたとこでした。彼が幸せになったことになにかホッとするものがありました。彼のケイへの想い、妻や娘への想い、なにか愛おしいです。なのに、衛藤さんにまた悲しい想いにさせる出来事が。さすがにこれはひどすぎる。こんな現実ってあり?悲しすぎます。これ以上の不幸はないです。神様は彼の何をそんなに嫌ったのでしょうか。

第4章 悪党
物語は動き出します。ついに生還者たちの計画が実行されます。物語が展開し始めたのに私はそわそわします。ここでケイと貴子の関係も進展し二人の官能が描かれます。ここも具体的な表現がばんばん入ります。生還者たちの計画がうまく行き過ぎているので、たぶんなにかイレギュラなことが起きそうな予感。このへんから面白くなってきました。上巻が終わりました。下巻を読みたいと思います。

(承前)
生還者たちは悪党となりました。自分たちの親や兄弟を死に追いやったことに復讐するときがきたのです。ドキドキする展開でした。ケイが好きな曲の歌詞をシーンの合間に抜いてくる辺りがリアルタイムの臨場感を効果的に与えていました。NSビルの上層中央に巨大な垂れ幕がかかり、そこに書かれてある文章を見たとき鳥肌が立ちました。移民政策によってアマゾンに縛り付けられた日本人の怒りの叫び声が聞こえたような気がしました。

第5章 逆賊
外務省OBの初老の男
事件を間接的に見ている看護師
移民用の映像を作った元製作会社社長の妻
日本移民の特許取得団体の社長

事件は、起こり第二幕へ。移民にかかわる当事者、かれらの視点から事件をみることになります。そこの立場の違い、思考の違いに面白みを感じました。同時にやるせなさと義憤というか憤りも感じました。本当、この著者さんは物事の本質を見ようと心がけてる人なんだなとしみじみ思いました。だからこそ、この4人の立場の考え方、行動がこうもリアリティのつまったキャラクターが出来上がるだろうと思いました。

以下省略
第6章 追跡者
第7章 覚醒
エピローグ

下巻もとても考え深く、そして面白かったです。貴子のキャラクターにはちょっとイラッしましたが、読み終わったらなんかすがすがしく、気持ちよかったです。

この物語は記憶にとどめておくべき物語です。ぜひ、読んでみるべき本です。歴史の過ちが書かれてあるからです。今現在もそうですが、年月が経てば経つほど、昔起こった出来事など私たちは忘れていきます。生まれる以前の話ならなおさらです。むしろ、それは当然だと思います。現代人は平和ぼけしていると批評されても、記憶にないものを思い出せといわれても無理な話なのです。だからって、例えば戦争の恐ろしさ、凶悪な事件を記憶にとどめておかなくていいとはならないと思います。だれも、あえて周りの家族を失ったりしたくないですから。戦争で得られる利潤ばかり目が言って、送り出された兵士の家族の気持ちが分からない人が増えても困ります。物理的に平和といえる今でさえ、不幸というものはなくらないのに、余計に不幸を増やす必要はないのです。だから、歴史の過ちは知っとくべきなんだと思います。疑似体験ができる、たとえそれが文章という実体をともなわないものだとしても、「想像」できるのです。「知っている」という立場にあれば、自分を当事者に投影して物事を考える可能性があるのです。だからこそ風化させてはいけないことなんだと思いました。「知る」本です。

素敵な言葉どもが記事の跡
みなさん、服を作るにあたって一番大事なことは何でしょう?
最初の講義のとき、先生は言った。
手先が器用なこと―誰かが言った。丁寧に裁断や縫製をすること―違う学生が口を開いた。
だが、それのいずれの答えにも先生は首を振った。

想像力です。

と、その先生は言った。
結果的に仕上がるだろう洋服の全体像を常に念頭に置きながら、作業する力です。その全体像を合わせ、細部に微調整を加えてゆく能力です。それさえあれば、多少の不器用さや粗さは克服できます。
自分の今やっている作業なり選択が、その最終的な形としてどのような結果を生み出すのかを、いつも考え、意識しておかなければならないということです。その想像力において責任をもって行動するということです。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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