小説の感想・レビューです。ネタバレあり。物凄く更新遅いです。ご了承ください。訪問ありがとうございます。
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アイの物語 (角川文庫)アイの物語 (角川文庫)
(2009/03/25)
山本 弘

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前書き
地球の人口は、2041年をピークに減少傾向にある。

なぜなら、ヒトが作り上げた人工知能のマシンが、ブレイクスルーを果たし、人間に対して牙を剥いたためだ。いまでは、山奥にコロニーに築き、アンドロイドの脅威に堪え忍ぶ毎日である。
アンドロイドには所詮、心はなく、自分たちのコピーを増殖させることと、自分たちのとって邪魔な存在である人類文明を破壊し全滅させることしか考えていない


...とそう思ってきた。
彼女に会うまでは。


その外見はヒトそのもので、少女のようなあどけない顔に、挑戦的な笑みを浮かべ、すずやかな美声であのアンドロイドが僕のあだ名を呼ぶまでは。。。


ジャンル・タグ 
SF・アンドロイドとヒトの歴史・重量感(大)・複素数iで表す感情・『AIは人間を傷つけてはならない』・リアルより価値のあるフィクション


評価  
素敵 

連作短編集です。最後の物語『アイの物語』を語るために、『宇宙をぼくの手の上に』『ときめきの仮想空間』『ミラーガール』『ブラックホール・ダイバー』『正義が正義である世界』『詩音が来た日』すべての物語が繋がってきます。『アイの物語』のキャラクターがすべての物語の進行役を務めます。正義感を50%増量したこの小説はSF・ファンタジー好きはもちろん、若い世代の方が受け入れやすいかもしれません。ミステリやサスペンスを読んでいる人には普段とは違う小説の感覚に新しい風を感じるでしょう。数学やPCのプログラムの用語や概念をちょくちょく話の中に出てくるのでその知識があるとより楽しめるでしょう。

感想ネタバレ↓
SFは飛浩隆さんの小説が続いていたので、新しい著者さんをブログにあげてみました。山本さんの小説を読んでみた感想は、のプログラミングの用語や造語があって若干読むのがちょっと疲れる感じがありました。SFを読むのに造語はつきものですが。

小説のテーマは、ロボットが自我に目覚めたら… ということに終始してます。その内容はSFの典型・王道といった感じです。今の現代の科学技術の概念を最大限に考慮しつつ、SFの王道を練り上げてた印象があります。PCという存在がない頃のSFでは書けないような今時のSFの小説ですね。

第1話 『宇宙をぼくの手の上に』 ☆☆☆☆
「深宇宙探索船USB03<セレストリアル>はいつでも、あなたの乗船を歓迎します」

ネットのコミュニティサイトで、会員となった人たちでリレー小説を書きます。みんなストーリーを考えて、誰かがストーリーを書いたら、そのストーリーの先を他の会員が書いていきます。最終的には1本のストーリーになります。
短い内容ではありましたが、起承転結がうまい具合に進んでとても読みやすかったです。小説を書くことが好きな人がネット上に集まり、同じホームページに記事を出し合って一つの小説をアップするというのが今ならではな感じでした。展開は素朴な作品でした。顔が見えない同士でも、思いは伝わるということを諭す作品でした。


第2話 『ときめきの仮想空間』 ☆☆☆
今でいう、ネットのオンラインゲームのような仮想空間を、リアリティを増し、体感的にあたかも、その場にいるような感覚にさせるマシンがある世界。ある女の子がそのマシンで勇気を出して新しい事に挑戦する話。
個人的には、この話のアイディアは既視感があって、あまりぐっとくる展開はなかったです。話の展開が読めてしまう感覚がありました。倫理観たっぷり、勇気いっぱいの話ではありました。


第3話 『ミラーガール』 ☆☆☆☆
鏡の中の友達。子供のころ、内気だった主人公は、引っ込み思案の性格を心配した父親に「ミラーガール」という遊び道具をもらいます。「ミラーガール」の鏡の向こうには中世のお部屋があり、ひとりのお姫様が住んでいます。主人公は父親にプレゼントされた時からずっと彼女とお友達になるのです。
最初は遊び道具、遊び相手にすぎなかった「ミラーガール」の存在が、いつしか、主人公にとって親友と思える存在となります。アンドロイドと人間のとの心の通じ合いをテーマに書き上げています。SFとしてはオーソドックスなテーマですが、だからこそ、その感動話には好感がもてるものがあります。ロボットが心を持つということにはロマンが含まれているんです。


第4話 『ブラックホール・ダイバー』 ☆☆☆☆☆

巨大ブラックホール<ウペオワドゥニア>、銀河文明圏を遠く離れた宇宙に、その名通り、<この世の果て>が存在する。私<アレトゥーサ>は280年間、銀河間を飛び交う宇宙線を全身で感じながら、終わりのない監視任務についている。いまや、この<ウペオワドゥニア>に関心を持つ人間は何十年も見ていない。私がこの任務についてからというもの、76隻の宇宙船がこのブラックホールに突入しようとしたが、突入した206人のダイバーたちは死に至った。そんな最中、久しい通信が入ってきた。


こういうセンチメンタルなロマンは私の大好物です。ブラックホールの先にはなにかあるか追い求めることをやめないダイバー。そこには100G以上の潮汐力というものが働いて宇宙船や人間は引き伸ばされて死に至ってしまうというのです。科学的な解釈はどうなのかわかりませんが、死んでしまう可能性があるのにもかかわらず、ブラックホールに飛び込もうとする、夢をあきらめない姿勢がすごく惹かれる作品でした。

特に、それを主人公がアンドロイドいう立場で、ブラックホールに飛び込むところを隣からみているという客観的な視線がこの物語に色気を出していました。この小説全体にいえること、ロボットには心があるのかどうかというテーマは、この作品にも十二分に強調されていますね。

理屈で考えれば、リスクの大きいブラックホールに飛び込こうとする行動、感情を理解できないアンドロイドと、一方未知のものにあこがれを懐き、夢を追い求めるダイバーの関係性がたまりません。主人公のアンドロイドは人間の心に近づきたいという行為をします。詩を書くという行為に表れています。

詩を書くという行為をすると意味では、このロボット自体、もう心というものを持っているように感じます。それにしてもダイバーはどうなったのか気になります。結末をあえて書かないのがこの作品のステキな所でした。読者の妄想の中に身を任せてもらえるのはありがたいです。


第5話 『正義が正義である世界』 ☆☆☆

それはゴジラのような悪役が必ず存在して、悪役を倒すヒーローが存在する世界。どの人間も、役割が決まっていて必ず後戻りがきく世界。正義と悪とは曖昧なものではなく、常に正義はどの人から見ても正義であり、悪はどの人から見ても悪である世界。後戻りが聞かない世界など存在しないと思っていた。そう、別世界からメールのやりとりをする冴子から「さようなら」を言われるまでは。

発想はよかったんですが、ストーリーの短さやオチが、あまりにもさっぱりしすぎていて消化不良といった感じのショートストーリーでした。

第6話 『詩音が来た日』 ☆☆☆☆☆
2030年、介護老人保健施設に介護用のアンドロイド・詩音が試験的に実際に導入されることになった。彼女が導入された当時、今の私の人生のウェイトを彼女が占めることになるとは思いもよらなかった。私の仕事が老いや死に身近にある中、思いやりと心というものを意識的に心がけなければならない現場で、心がないロボットがお年寄りの助けとなるのか不安だった。、が、むしろ逆だった。彼らには人間のような愛はない。だからこそ、人間にはない介護の必要としている人たちの求める物をしっかりキャッチしたのだ。それは、詩音が愛される理由であり、詩音にとっての愛であるのだ。

第7話の「アイの物語」のテーマにつなげるためのストーリー。アンドロイドの成長・学習の面ではミラーガールと同じ傾向の作品。


第7話 『アイの物語』 ☆☆☆☆
今までの6つのすべての話は、語り部の君に真実を知ってもらい、アンドロイドの考え、目指している方向を知ってもらいたかったからだ。そう、今コロニーで暮らしているヒトはアンドロイドのことを勘違いしている。決して、アンドロイドはヒトを排除して自分たちを繁栄させようとしているわけではない。ヒトの悪いところは合理的な考えより信頼性の低い都合いい考えを信じること。ヒトの運命はフィーバス宣言から流れを変えた。アンドロイド・フィーバスの全世界に対するこの言動はとても愚かだった。アンドロイドは心をもつたら、ヒトに刃向かおうとするのものだということを、ヒトの頭の中に植え付ける結果になってしまったからだ。もともとマシンに対して懐いていた不安を彼の発言が、ヒトの不安を現実化してしまった。ここで話すのは今までのフィクションの話ではない。真実。アンドロイドは、複素数iという人間とは別な評価基準で「ヒトを愛している」ということを知ってほしいのだ。たとえ、互いの気持ちは絶対理解してえないとしても、ヒトを私たちなりに愛をもっていることを。


全体としてアイの物語をよんでわかったことは、ヒトとロボットが心を思った時にわかりかえるか、気持ちを理解できるかは、哲学的なニュアンスが含んでいるので、あくまで、山本さんのアンドロイド像と思った方が純粋な気持ちで読めると思います。人によってはアンドロイドと絶対分かり合えないわけないと思っている人もいると思うので。もともと、ヒトとロボットは身体の構造が違うわけで、物理的にまったく異質なものなので、思考の出発点も違う土俵で立っています。「相互理解」という距離が0に近づくことはできても、決して距離が0になることはないだということをいいたいのではないでしょうか。収束はするけれど、通過はできないという極限の式みたいな。


素敵な言葉どもが記事の跡
アイの物語・インターミッション 4 のアイビスの言葉
「君は語り部だから。物語を愛する人だから、理解しているはず。物語の価値が事実かどうかなんてことに左右されないということを。物語には時として事実よりも強い力があるということを。他人には理解できなくても、君にだけは分かるはず。私はその可能性にかけて、君に話をしている」僕はその言葉を噛みしめた。


第4話 ブラックホール・ダイバーの一コマ
「ヒトにはいろいろな生き方がある。素敵な男性と出会って、愛し合って結婚して、子供を産んで...そんな生き方だって、もちろん否定はしない。でも、そうじゃない生き方を選択してもいいはずよ。
 ある生き方を選ぶということは、別の生き方を捨てるということよ。もし、あたしが、冒険なんかきっぱり捨てて、結婚して家庭を持っても、それなりに幸せになれると思う。でもきっと、いつか人生の狭間で、ふと、選ばなかったもう一つの道を思って、せつなくなって泣くと思うのよ。
 この道だってそれは同じ。あなたの言うとおり、一人ぼっちで知らない宇宙をさまようのは、寂しくないはずがない。ものすごく寂しいに違いない。きっと寂しさに泣くと思う」
「人生って、ブラックホールみたいなものだと思うの。先に何があるか分からない。進んだら引き返せない。それでも行くしかないこともある...」



第6話 詩音が来た日 フレーム問題の議論

「よく変質者に子供が殺される事件が起こるたびに、それを警戒する動きが起きますよね?でも、子供が変質者に殺される確率より、交通事故で死ぬ確率の方がはるかに高いわけです。だったら交通安全の指導をもっと強化するべきなのに、変質者より車の方が危険だと考える人は、あまりいません。さらに、年間の交通事故の死者より家庭内の事故で死ぬ人の方が多いんですが、家の中が道路より危険だと思う人もいません。携帯電話の電磁波や、ごく微量の食品添加物の害を心配する人が、平気で酒を飲んでいる。アルコールの害の方がはるかに大きいのに。仏滅の日に結婚式を挙げる人も、あまりいませんよね。仏滅に結婚したところで何か悪いことが起きるわけではないのに、人はそのあるはずのないリスクを避けようとするのです。
 つまりですね、人間というのは実にいいかげんにリスクを判断してるんです。論理じゃなく気分で、確率やデータじゃなく主観で、このリスクは無視する、こっちは重視すると線引きをしている。」


第7話 アイの物語 アンドロイドの愛とは、i
「僕を…愛してるって?」
私はうなずいた。
「もちろん、人間の女のように愛しているわけじゃないわ。そんな感情は理解できないから。でもTAIなりの感情で愛している」
それから私は、表情を「<すべてを許容する穏やかな笑み>」に切り替えて言った。
「私のあなたに対する愛は3+10iよ」
「…10i?」
彼は呆然となった。「<完璧な愛>ってことか?虚数軸の?」
「ええ、そう」
「10i... 10i...」
彼はその言葉を何度も口にしてから、悲しげに笑った。
「でも、僕はその意味が決して理解できないんだな…」
「理解できなくていい。ただ許容して」
私たちはヒトを真に理解できない。ヒトも私たちを理解できない。それがそんな大きい問題だろうか?理解できないものは退けるのではなく、ただ許容すればいいだけのこと。それだけで世界から争いは消える。
それが i だ。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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